特別支給の老齢厚生年金
- 筒井
- 6月22日
- 読了時間: 6分
更新日:8月1日
ここでは特別支給の老齢厚生年金についてお伝えします。
昭和60年(1985年)の法改正により、老齢厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳となりました。
その経過措置として設けられた制度です。
老齢厚生年金では60~65歳までの間、報酬比例としての支給。
老齢基礎年金では60~65歳までの間、定額部分としての支給。※終了
報酬比例スタート年齢 | 定額部分の加算期間 |
60歳〜 | 64〜65歳未満の1年間のみ |
61歳〜 | 同上(1年間) |
62歳〜 | 63〜65歳未満の2年間! |
63歳〜 | 62〜65歳未満の3年間!! |
64歳〜 | 61〜65歳未満の4年間!!! |
<支給額>
老齢厚生年金(報酬比例部分)+条件により定額部分
①報酬比例部分 | 加入期間・報酬に応じて支給される。全員対象 |
②定額部分 | 60歳台前半でも基礎年金相当分がもらえる“上乗せ”制度。 ※生年月日・資格期間に条件あり(最大300ヶ月までで計算) ※かつての基礎年金と覚える |
<②定額部分計算式(令和7年4月以降の例)>
昭和31年4月2日以後生まれ: 1,734円 × 生年月日に応じた乗率 × 被保険者期間(被加入月数) 改定:1,734円 × 0.9385 ≒ 1,628円
昭和31年4月1日以前生まれ: 1,729円 × 乗率 × 被保険者期間 改定:1,729円 × 0.9385 ≒ 1,621円
生年月日 | 計算式(令和7年4月以降) |
昭和31年4月2日以後 | 1,628円 × 乗率 × 加入月数 |
昭和31年4月1日以前 | 1,621円 × 乗率 × 加入月数 |
<①受給要件>
老齢基礎年金の受給資格期間が10年ある
老齢厚生年金に1年以上加入していたこと
男性:昭和36年4月1日以前に生まれている
女性:昭和41年4月1日以前に生まれている
特定警察職員等 昭和42年4月1日以前に生まれている
<②受給要件>
加入期間 | 20年以上 or 中高齢の特例で15年以上 |
生年月日 | 男性:昭和24年4月2日〜昭和28年4月1日 |
女性:昭和29年4月2日〜昭和33年4月1日 | |
支給開始年齢 | 生年月日に応じて |
<中高齢の特例>
性別 | 👨 男性限定(※配偶者扶養が前提だから) |
生年月日 | 昭和8年4月2日~昭和16年4月1日生まれ |
被保険者期間 | 厚生年金に15年以上加入 |
配偶者要件 | 昭和41年4月1日以前生まれの配偶者を扶養していた(年下の奥さんを想定) |
種類 | 支給年齢 | 対象となる加入条件 | 計算式 | 備考 |
老齢厚生年金 | 65歳〜 | 原則10年以上 | 通常の報酬比例 | 一般的な年金 |
特例老齢年金 | 60歳〜 | 厚生年金1年以上+通算20年以上(保険料納付10年未満) | 特別支給の式 | レアなケース |
特別支給の老齢厚生年金 | 60歳〜64歳 | 保険料納付10年以上 | 特別支給の式 | 段階的に終了予定 |
<経過的加算が同じになる条件まとめ>
<基本>
・経過的加算は「定額部分の代替措置」であり、昭和21年4月2日以降生まれの人には原則なし
・ただし、特定の条件を満たす場合は「経過的加算」が支給される
<加算額が同じになる条件>
・生年月日が同じ(=同じ乗率で計算される)
・報酬比例部分の年金額が同じ
→ 経過的加算は「旧定額部分に相当する額」−「報酬比例部分の一部」で算定されるため
・被保険者期間が同じ
→ 特例的な加算や読み替えの影響が一致するため
<具体例で見る条件の一致>
・昭和28年4月2日生まれのAさんとBさん
・いずれも40年加入で、年収も同じ
→ この場合、報酬比例部分も同じ → 経過的加算も同額になる
<注意点>
・「経過的加算額が同じ」=「総年金額が同じ」ではない
→ 報酬比例部分以外(加給年金など)の影響で違いが出ることも
【長期加入者特例(老齢厚生年金)】
厚生年金の被保険者期間が44年以上ある人は、「長期加入者特例」として、特別支給の老齢厚生年金における定額部分の支給要件が緩和される。
<受給開始年齢>
男性
昭和32年4月2日~昭和34年4月1日 63歳
昭和34年4月2日~昭和36年4月1日 64歳
女性
昭和33年4月2日~昭和35年4月1日 61歳
昭和35年4月2日~昭和37年4月1日 62歳
昭和37年4月2日~昭和39年4月1日 63歳
昭和39年4月2日~昭和41年4月1日 64歳
【経過的加算額】
老齢厚生年金の受給者のうち、報酬比例部分のみの受給者に対して、旧制度とのバランスを取るために設けられた経過措置的な加算。
<要件>
・昭和16年4月1日以前生まれの者
・老齢厚生年金の受給権者で、定額部分が支給されない人(=報酬比例部分のみ)
・加給年金を受けないこと(加給年金との併給は不可)
<支給額>
・報酬比例部分のみを受給している場合に、従来制度(定額部分あり)との格差を補うための一定額
※支給額は個別計算されるため、試験では金額より趣旨・対象者が問われやすい
※注意・定額部分が支給される人には支給されない・加給年金を受給している人にも支給されない(併給不可)
・あくまで報酬比例部分のみのケースが対象・現在では新規該当者はほぼいないが、制度の理解としては重要
<被保険者期間の上限月数>加入月数が長くても、**最大456月(=38年)**として扱われる!
38年というのは、昭和36年4月に厚生年金がスタートしてから60歳になるまでの期間で、 それ以上加入しても計算には影響しないルール。
<ポイント整理>
「定額部分」の計算には、加入期間に応じて定額で加算される
でも、38年(456月)以上の加入があっても、それ以上は反映されない
したがって、長期加入でも456月が限度であり、計算上はそこが打ち止め!
年金の種類 | 内容 |
特別支給の老齢厚生年金(60〜64歳) | 報酬比例部分 + 定額部分 |
老齢年金(65歳〜) | 報酬比例部分(老齢厚生年金)+ 老齢基礎年金 |
経過的加算額(65歳〜) | 「定額部分」−「老齢基礎年金」で生まれる差を埋める金額 |
【特別支給の老齢厚生年金×求職申込み】
60歳台前半で特別支給の老齢厚生年金を受給している人が、失業手当を受給するときは注意が必要。ハローワークで「求職の申込み」をした場合、年金が支給停止になる可能性がある。
<仕組み>
「求職の申込み」をすることで、「失業者」として扱われる
その結果、失業等給付(基本手当)を受給している期間は、特別支給の年金が支給停止に
一方、「申込みをしなければ」支給停止されない(≒失業者と見なされない)
※ポイント
失業手当と年金は両方同時に満額受けられない
どちらを選ぶかは金額や状況によって判断する必要あり
項目 | 特別支給の老齢厚生年金 | 雇用保険の基本手当(失業手当) |
受給条件 | 原則:60歳以上で受給資格あり | 退職後に就職の意思あり+求職申込み |
支給手続き | 自動的に支給(届出済みなら) | ハローワークで求職申込み+申請 |
支給停止の関係 | 失業手当受給中は支給停止の対象 | 年金受給の有無で日額に影響しない |
支給額の目安 | 数万円〜十数万円/月(個人差あり) | 最大20万以上/月も可(前職収入に比例) |
同時受給 | 原則不可(調整が入る) | 原則不可(年金が支給停止される) |
メリット | 長期的に安定して受給できる | 高額な収入補填が短期間で受けられる |
支給停止回避策 | 求職申込みをしない(失業者扱いされない) | —(受給条件の一部) |
この記事では特別支給の老齢厚生年金についてご紹介しました。
次回に続きます!