●労働基準法(就業規則・寄宿舎生活の秩序)
- 筒井

- 10月17日
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第九章 就業規則
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
※その他であっても労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間は、労働時間と解される。
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
※雇用契約書と重なる項目がありますが、より詳しく書いてもよいです。
また、問題のある労働者に対する制裁(減給・懲戒解雇など)がある場合は記載しておかなければなりません。
(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
(寄宿舎生活の秩序)
第九十五条 事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、左の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。
一 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
二 行事に関する事項
三 食事に関する事項
四 安全及び衛生に関する事項
五 建設物及び設備の管理に関する事項
② 使用者は、前項第一号乃至第四号の事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
③ 使用者は、第一項の規定により届出をなすについて、前項の同意を証明する書面を添附しなければならない。
④ 使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。
※五項目は絶対的必要記載事項とされていて、一つでも欠けていたら届出は受理されないと明記されています
≪その他参考資料≫
「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、
その部分については、無効(※)となります(労働基準法第93条、労働契約法第12条)。」
※無効となった部分は、就業規則で定める基準が適用されます。
「就業規則に記載する内容には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、当該事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります(労働基準法第89条)。」
(参考:就業規則に記載する事項・効力)
「正社員の就業規則の適用範囲について、パート労働者と労働条件の内容が異なる従業者についてその適用を除外することは差し支えないが、この場合、就業規則の本則において、別個の規則の適用対象労働者に関する適用除外規定や別規則への委任規定が必要」
(参考:昭和63年3月14日の基収150号通達)
「育児・介護休業、子の看護等休暇、介護休暇、育児・介護のための所定外労働、時間外労働及び深夜業の制限については、就業規則に、①付与要件(対象となる労働者の範囲等)②取得に必要な手続③期間について記載する必要があります。」
(参考:就業規則への記載はもうお済みですか)
最高裁判所は、就業規則の変更による労働者の労働条件の不利益変更が許されるかどうかについて、次のように判示した。
「解雇など就業規則の作成・変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、労働契約の内容を一方的に変更するものであって、労働契約の集団的処理性を前提に、個々の労働者がこれに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。そして、右にいう就業規則の 合理性の有無は、その作成または変更が、労働者の労働条件を必要性に基づいて変更するものであること、特に賃金や退職金等、労働者にとって重要な権利に関する不利益変更である場合には、その 規範性を認めることができるかどうかが問題となる。」
さらに、具体的判断にあたっては、使用者側の交渉の内容・程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、代償措置の有無、労働組合等との交渉経緯、社会的状況などを総合考慮して合理性を判断すべきであるとした。
(参考:第二小島秀雄事件(最判昭和63年2月16日))