三六協定と上限・効力
- 筒井

- 3 日前
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ここでは三六協定と上限・効力についてお伝えします。
【三六協定と上限・効力】
<三六協定(労基法36条)>
三六協定とは、労働基準法第36条に基づき、時間外労働や休日労働に関する労使間の協定である。
この協定を締結することで、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて労働させること、
または休日に労働させることができる。
<過半数代表者の保護(労基則6条の2 第3項)>
使用者は、労働者が過半数代表者であること、または過半数代表者になろうとしたこと、もしくは過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
なお、この規定に違反しても罰則は設けられていない。
<過半数代表者の選出制限(基発H11.3.31 168号)>
管理監督者(労基法41条2号に該当する者)は、経営側に近い立場であり、
労働者の利益を代表して使用者と協定を締結することは公正を欠くため、
過半数代表者になることはできない。
<効力の発生>
三六協定は「締結しただけ」では効力がなく、
所轄労働基準監督署長に届出てはじめて適法に時間外・休日労働を行うことができる。
したがって、届出日前に行われた時間外労働は、協定の対象外であり違法となる。
<時間外労働の上限>
三六協定を締結しても、次の上限を超えることはできない。
・原則:月45時間、年360時間
・特別条項付き協定の場合:
年720時間以内、複数月平均80時間以内、1か月100時間未満
(上限を超えられるのは年6か月以内に限る)
<代替休暇制度>
1か月の時間外労働が60時間を超えた場合、
使用者は50%の割増賃金の代わりに「代替休暇」を与えることもできる。
代替休暇制度を実施するには、労使協定の締結が必要であり、
その内容を就業規則などで明示しておく必要がある。
<就業規則との関係(判例)>
三六協定を締結・届出しても、就業規則の定めが合理的な範囲でなければ、
残業命令は無効とされる(最高裁S63.1.1基発1号)。
就業規則に「必要に応じて時間外労働を命じる」とあっても、
無制限・不合理な内容であればその命令は無効となる。
<罰則>
上限を超えて時間外・休日労働をさせた場合、
使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
【坑内労働等の労働時間の上限(法36条5項・施行規則25条)】
<条文の概要>
坑内労働その他厚生労働省令で定める業務については、
1日について2時間を超えて延長することはできない。
<施行規則25条>
坑内労働以外に、この制限が及ぶ業務は次のとおりとされている。
・著しく身体に負担のかかる業務
・有害なガス・粉塵・高温など、健康障害のおそれがある業務
<趣旨>
坑内作業など極めて過酷な労働では、
長時間の延長を認めると危険が大きいため、
三六協定を結んでいても「1日2時間まで」に制限されている。
<休日労働について>
休日労働については明文規定はないが、
労働基準法の趣旨上「10時間を超えるような長時間労働をさせることは違法」
と解されている(判例・通達による解釈)。
(平成29年択一式 労基法 問4肢C)
<まとめ>
・坑内労働等:1日2時間を超える延長は禁止(法36条5項・則25条)
・休日労働:明文なしだが、10時間超は違法と解される
【36協定の本社一括届出】
<原則>
・36協定(時間外・休日労働に関する協定)は、事業場ごとに締結し、各事業場の所轄労基署長へ届出する必要がある。
<特例:本社一括届出>
・一定の条件を満たせば、本社が複数の事業場分の36協定をまとめて一括で届出できる。
・この場合も、36協定自体は事業場ごとに作成する必要がある。
<一括届出の条件>
① 本社と全部または一部の本社以外の事業場に係る36協定の内容が同一であること。
② 本社の所轄労基署に届出する際、本社分だけでなく、本社以外の対象事業場分の36協定も同時に届け出ること。
<イメージ>
- 本来:事業場A→Aの労基署へ、事業場B→Bの労基署へ…と別々に届出。
- 特例:事業場A・B・Cの協定を本社がまとめて、本社の所轄労基署へ一括提出(条件を満たす場合)。
- 労基署は「各事業場ごとに届出があったもの」とみなす。
<ポイント>
・36協定の締結は、各事業場ごとに過半数代表(労組または過半数代表者)と行う。
・届出の手間を省けるが、協定書自体を一つにまとめて作るわけではない。
この記事では三六協定と上限・効力についてご紹介しました。
次回に続きます!


