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支給停止の可能性のある在職老齢年金

  • 執筆者の写真: 筒井
    筒井
  • 7月19日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月10日

ここでは在職老齢年金についてお伝えします。



●在職老齢年金の支給停止

厚生年金の受給権者が在職中(厚生年金に加入中)で、一定以上の収入がある場合に、老齢厚生年金の全部または一部が支給停止される制度。


<支給停止の判定>

年齢により停止基準が異なる。


60歳〜64歳の場合:

・総報酬月額相当額 + 年金月額(報酬比例部分+定額部分)・合計が 28万円超 の場合、超過分に応じて一部または全部が停止される

65歳以上の場合:

・総報酬月額相当額 + 基本月額(報酬比例部分のみ)・合計が  ※50万円超  の場合、超過分に応じて一部が停止される ※50万円(←旧48万円から引き上げ)

※総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 +(過去1年間の賞与 ÷ 12)

70歳以上の場合: ※50万円(←旧48万円から引き上げ)

・総報酬月額相当額 + 基本月額(報酬比例部分のみ)・合計が ※50万円 の場合、超過分に応じて一部が停止される


(例)

総報酬月額相当額が48万の66歳被保険者が基本月額10万の老齢厚生年金を受け取る事によって在職老齢年金により5万支給停止される。 総報酬月額相当額=48万+10万>48万 10万の超過 5万の支給停止(労使折半)

<支給停止の対象となるもの>

・老齢厚生年金(報酬比例部分)・経過的加算額(老齢厚生年金の一部として停止)


<支給停止の対象とならないもの>・繰下げ加算額(繰下げによる増額分)・加給年金額(条件を満たせば支給)・振替加算額(基礎年金に加算されるため)

加算名

支給される?(在職中)

支給停止の対象?

経過的加算額

❌ 支給されない(停止)

✅ 停止される(本体の一部)

繰下げ加算額(増額分)

✅ 支給される

❌ 停止されない


<ポイント>

・「在職老齢年金の支給停止」とは、あくまで“厚生年金の報酬比例部分”にかかる話。

・65歳以上では停止の基準が緩やかになる(=就労支援の一環)。



  • 在職によって停止されるのは、基本的には老齢厚生年金(報酬比例部分)だけ!

  • でも、他の年金は“別の要因”で停止・終了することがある(年齢・併給・所得など)



年金の種類

支給停止がある?

停止される場面の例

老齢厚生年金

✅ あり

在職老齢年金のように、報酬と年金の合計額が一定を超えると停止

加給年金額

✅ あり

配偶者が65歳になったとき/障害年金を受け取っているときなど

障害年金(基礎・厚生)

✅ あり

一定以上の所得があると「子の加算」が支給停止されることがある

遺族厚生年金

✅ あり

中高齢寡婦加算 → 本人が老齢厚生年金をもらい始めると停止される

寡婦年金

✅ あり

本人が65歳になり、老齢基礎年金と選択するタイミングで支給終了

障害手当金

✅ あり

支給前に再就職などで回復したら不支給または返還対象



【老齢厚生年金と雇用保険給付の調整】

老齢厚生年金と、雇用保険法に基づく給付(基本手当や高年齢雇用継続給付など)が重複する場合、調整は雇用保険側で行われる。

年金側から減額されることはなく、ハローワークなどの雇用保険給付において、給付制限や減額が行われる。


<調整対象の主な組み合わせ>

特別支給の老齢厚生年金 × 基本手当

繰上げ支給された老齢基礎年金 × 基本手当

特別支給の老齢厚生年金 × 高年齢雇用継続給付 など


※ポイント

調整は雇用保険側で行われる

年金の額自体は変更されない(支給停止とは別扱い)


年金 or 給付名

備考

特別支給の老齢厚生年金

60代前半までの人が受給する年金

老齢基礎年金の繰上げ支給

65歳前に早くもらう選択をした場合

雇用保険の基本手当

いわゆる失業手当

高年齢雇用継続給付

再就職後の賃金低下を補填する給付金


(備考)

年金名

属する年金制度

老齢厚生年金

厚生年金保険

加給年金額

厚生年金保険(老齢厚生年金の加算)

障害厚生年金・障害基礎年金

厚生年金/国民年金

遺族厚生年金

厚生年金保険

遺族基礎年金

国民年金

中高齢寡婦加算

厚生年金保険(遺族厚生年金の加算)

寡婦年金

国民年金

障害手当金

厚生年金保険(給付のひとつ)



【支給停止額の再計算と改定月の関係】


在職老齢年金では、「総報酬月額相当額(=標準報酬月額 + 過去1年間の標準賞与の月割り平均)」に基づいて支給停止額が決まる。

この総報酬月額相当額は、昇給・降給・賞与支給などにより変更(=改定)されることがある。


<再計算のタイミング>

・総報酬月額相当額が改定された月から、支給停止額が再計算される

・改定が行われた月分から支給停止額が変更される

・過去にさかのぼって再計算されることはない


<具体例>

・4月に昇給 → 4月分の年金から支給停止額を変更(振込は6月)


<注意ポイント>

・実際の年金支給は2か月遅れなので、変更の影響が振込額に反映されるのは後になる

・本人が申請する必要はない。会社が標準報酬月額の改定届や賞与支払届を提出し、その情報が年金機構に連動して自動で再計算される

・会社の届出漏れや誤りがあると反映されないため、必要に応じて本人確認が必要

・60〜64歳の特別支給の老齢厚生年金、65歳以降の老齢厚生年金ともに共通のルール



【特別支給の老齢厚生年金 × 雇用保険(基本手当)による支給停止】

基本手当をもらっている間、原則として年金は支給停止になる(調整される)

ただし、停止された月数に対応しない日数の基本手当が残ってると、一部年金として遡って支給される。

(例)

5か月の年金停止月と100日の基本手当支給を受けた日がある場合

100日÷30日=3.3ヶ月分受け取ったので

1.7ヶ月分受給していないとなり 1ヶ月分の基本手当分を年金として遡って受給できる。

(0.7ヶ月分は消滅する)



■ 年金の時効(国年・厚年共通)

・原則:時効は5年

・支給停止されている間は、時効の進行がストップする(権利を守るため)



<在職老齢年金|70歳未満と70歳以上の取扱い比較ノート>


<①基本の立場と定義>


・70歳未満:厚生年金の被保険者(在職中は被保険者資格あり)

・70歳以上:厚生年金の適用除外者(資格は消滅するが「記録対象者」として標準報酬の記録は続く)


<②在職老齢年金の支給停止の対象か?>


・70歳未満の被保険者は支給停止の対象になる(賃金と年金の合計により支給額調整あり)

・70歳以上の記録対象者は支給停止の対象外(在職中でも老齢厚生年金は全額支給される)


<③報酬比例部分の計算や加算の影響>


・70歳未満:退職や賃金減少で年金が再計算される(再裁定・支給再開など)

・70歳以上:在職中でも毎年10月に「在職定時改定」が行われ、報酬に応じた年金額が増える可能性あり


<④保険料の納付>


・70歳未満:厚生年金保険料を納付(本人と事業主で折半)

・70歳以上:厚生年金保険料の納付義務なし(適用除外のため)


<⑤ポイントまとめ>


・70歳を境に「支給停止の有無」「保険料の負担」「資格の有無」に明確な違いがある

・70歳以上は在職していても、年金は全額支給され、報酬記録は定時改定に反映される



<在職老齢年金|70歳未満と70歳以上の比較表>

項目      

70歳未満の被保険者

70歳以上の記録対象者(適用除外)

被保険者資格 

あり(厚生年金に加入)

なし(適用除外。標準報酬の記録は継続)

保険料の納付 

あり(本人+事業主で折半)

なし

支給停止の対象か

対象(賃金+年金の合計で支給停止される可能性あり)

対象外(報酬がいくら高くても全額支給される)

年金の改定タイミング

退職・報酬減少時などに再裁定

毎年10月に在職定時改定が行われる

標準報酬の記録

あり(標準報酬月額として記録)

あり(70歳以降も標準報酬として記録される)





この記事では在職老齢年金についてご紹介しました。

次回に続きます!










 


 
 

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