適用事業所の範囲と種類
- 筒井

- 10月17日
- 読了時間: 5分
ここでは適用事業所の範囲と種類についてお伝えします。
[目次]
【適用事業所の種類|健康保険・厚生年金・雇用保険】
【適用事業所における業種区分(1号〜15号)】
【健康保険・厚生年金|適用事業所(共通版)】
【原則として適用事業所にならない職業(個人事業主の場合)】
【任意特定適用事業所(健康保険・厚生年金)】
【任意適用事業所(雇用保険)|労働者の希望による加入申請義務】
<定義>
・雇用保険の強制適用事業所以外の事業所が、申請により適用事業所となった場合、その事業所を「任意適用事業所」という。
<加入申請義務が生じる場合>
・使用される労働者の過半数(2分の1以上) が、雇用保険への加入を希望したときは、
事業主は必ず加入申請を行わなければならない。
<ポイント>
・「希望者が過半数」という条件を満たしたら、事業主の任意ではなく義務となる。
・申請は「雇用保険適用事業所設置届」により行う。
・対象は原則として、常時雇用される労働者(季節的雇用者を除く場合もある)。
【適用事業所における業種区分(1号〜15号)】
健康保険・厚生年金の適用事業所のうち、法人はすべて強制適用となるが、個人事業所は業種と人数(常時5人以上)によって適用が決まる。そのため、個人事業については下記の「第1号〜第15号業種(法令上の業種区分)」に該当するかどうかで強制適用か任意適用かを判断する。
なお、第1号〜第5号は「工業的業種」、第6号〜第15号は「非工業的業種」に分類される。
号数 | 業種名 | 備考 |
第1号 | 製造業 | 食品・衣服・機械などの製造 |
第2号 | 鉱業 | 採掘・精錬など |
第3号 | 建設業 | 土木・建築・設備工事など |
第4号 | 運送業 | 陸上・海上・航空の運送 |
第5号 | 清掃・と畜業 | 廃棄物処理・清掃など |
第6号 | 販売業 | 卸・小売など |
第7号 | 金融・保険業 | 銀行・保険代理店など |
第8号 | 電気・ガス・水道業 | 公益的インフラ関連 |
第9号 | 通信・放送業 | 郵便・インターネット・TV局など |
第10号 | 倉庫業 | 保管・物流施設の運営 |
第11号 | 農林水産物の加工業 | 原材料の加工はOK(生産そのものは除外) |
第12号 | 医療・保健業 | 病院・診療所など(個人開業医も対象) |
第13号 | 教育・研究業 | 学習塾・研究所など |
第14号 | 広告・出版業 | 新聞社・出版社など |
第15号 | サービス業のうち上記類似業種 | 例:理美容、クリーニングなど |
【健康保険・厚生年金|適用事業所(共通版)】
<基本の考え方>
・健康保険も厚生年金も、「事業所単位(=法人・事業主単位)」で制度が適用される。
→ 個人ではなく「事業所が適用対象かどうか」が出発点。
<強制適用事業所>
・法人事業所(人数に関係なく強制適用)。
・個人事業所のうち、法定の対象業種(第1号〜第15号)に該当し、かつ常時5人以上の従業員を使用するもの。
(この「対象業種」に士業・農林漁業・接客娯楽業などは含まれない。)
<任意適用事業所>
・上記以外の個人事業所(=対象業種に該当しないもの、または5人未満)。
・事業主と労働者の過半数の同意を得て、厚生労働大臣の認可を受ければ適用可能。
<補足>
・健康保険は「協会けんぽ」「健保組合」の違いがあるが、適用事業所の範囲や制度構造は厚生年金と共通している。
【原則として適用事業所にならない職業(個人事業主の場合)】
<背景>
・健康保険法・厚生年金保険法では、業種ごとに「強制適用事業所」となる対象が定められている
・サービス業や農林漁業など、一部の業種は個人事業主だと原則として強制適用外
<主な強制適用外業種(個人事業主の場合)>
・サービス業(例:美容院、理容院、エステサロン、旅館、飲食店、娯楽業など)
・農業
・林業
・漁業
・その他、政令で除外されている一部業種
<ポイント>
・これらの業種でも「法人化」すれば、従業員数に関係なく強制適用事業所になる
・個人事業主でも「任意適用事業所」として申請すれば社会保険に加入可能
【任意特定適用事業所(健康保険・厚生年金)】
<定義>
強制適用事業所以外の事業所が、申請により健康保険・厚生年金保険の適用事業所となった場合、その事業所を「任意特定適用事業所」と呼ぶ。
<対象となる事業所の例>
・個人事業所で常時5人未満の従業員しかいない(強制適用業種を除く)
・法人ではなく任意適用を選択する必要があるケース
<手続きの流れ>
① 事業主が、事業所を被保険者の適用対象にしたいと考える
② 事業所の被保険者となる従業員の「過半数の同意」を得る
③ 年金事務所に「適用申請」を提出
④ 日本年金機構の承認が下りた日から、適用事業所となる
<承認後の扱い>
・強制適用事業所と同様に取り扱われる。
・適用後は、被保険者の資格要件(例:週20時間以上など)も適用される。
・簡単には取り消しできない(やめたい場合は再申請が必要)。
<制度の趣旨>
小規模な事業所でも、従業員の福利厚生を充実させたい場合に、希望すれば社会保険制度を利用できるようにするための制度。
<よくある勘違い>
・「法人=すべて強制適用」ではあるが、1人会社の場合など例外もある。
・「任意適用=いつでもやめられる」わけではない。
<類似用語との比較(参考)>
・特定適用事業所:週20時間以上の短時間労働者が社会保険の加入対象となる事業所(501人以上など)。
・任意特定適用事業所:上記のような大規模でなくても、申請によって適用される事業所。
この記事では適用事業所の範囲と種類についてご紹介しました。
次回に続きます!


