[基礎・厚生]産前産後の給付
- 筒井

- 8月1日
- 読了時間: 6分
更新日:8月3日
ここでは産前産後における厚生年金の給付についてお伝えします。
【厚生年金保険|産前産後の取扱いまとめ】
<対象期間>
・産前:出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から
・産後:出産の翌日から8週間
→ 上記の期間は「産前産後休業」とされ、保険料免除の対象になる。
<保険料免除制度の内容>
・対象者:厚生年金の被保険者で、産前産後に勤務を休んでいる者
・免除される内容:本人負担分+会社負担分の厚生年金保険料(健康保険料も同様)
・年金額への影響:免除期間中も「保険料を納めたもの」とみなされ、将来の年金額に満額反映される
<申請手続き>
・事業主が「産前産後休業取得者申出書」を提出(本人の申出に基づく)
・提出先:年金事務所
・申請時期:産前産後休業の開始日以降、速やかに提出
<注意点>
・実際に休業していない期間(出勤している場合など)は免除対象外
・出産手当金の受給には影響なし
・産後8週間を過ぎて復職した日が属する月から保険料徴収が再開される
<他制度との比較>
制度名 | 保険料の免除 | 年金額への影響 | 対象期間 |
産前産後休業中 | ○(本人+事業主分) | ○(満額算定) | 出産の前6週・後8週 |
育児休業中 | ○(本人+事業主分) | ○(満額算定) | 子が1歳(最長2歳)まで |
通常の休職・休業 | ✕ | ✕ | 任意であり、免除なし |
【厚生年金保険|産前産後休業中の保険料免除の開始・終了月ルール】
<基本ルール>
・保険料の免除は、
「開始日の翌日が属する月から」
「終了日の属する月まで」
→ この期間中は、厚生年金保険料および健康保険料が免除される。
<開始日の考え方>
・休業開始日の「翌日」が属する月から免除スタート。
(例1)開始日:4月1日 → 翌日4月2日 → 免除開始:4月分から
(例2)開始日:3月31日 → 翌日4月1日 → 免除開始:4月分から(=3月分は徴収)
<終了日の考え方>
・休業終了日の「属する月」まで免除。
(例)終了日:7月10日 → 7月分まで免除(=8月から徴収)
<ポイント>
・「翌日が属する月」から免除 → 月末開始だと前月分は免除されない
・終了は「その月まで」免除 → 月途中の復職でもその月分まで免除
<例②:開始日が月末(3月31日)の場合>
項目 | 日付 | 解説 |
産前産後休業開始日 | 3月31日 | 開始日:3/31 |
翌日 | 4月1日 | → この「翌日」が属する月=4月 |
→免除開始月 | 4月分から | → 4月分から免除(3月分は徴収される) |
【厚生年金保険法 第26条|標準報酬月額の特例】
<制度概要>
・産前産後休業や育児等で報酬が下がっても、年金額の計算上は「低下前の標準報酬月額」を用いることができる特例。
・法的根拠:厚生年金保険法 第26条
<目的>
・育児・短時間勤務などによる報酬の一時的な低下が、将来の年金額に悪影響を及ぼさないようにするため
<対象者と4つの類型(第1号〜第4号)>
①【第1号】産前産後休業をしたことがある者
②【第2号】育児休業をしたことがある者
③【第3号】小学校就学前の子を養育しており、労働時間の短縮などにより報酬が下がった者
④【第4号】育児に準ずる特別な事情により、報酬が下がった者(※大臣の認定が必要)
<手続きの区分>
類型 | 対象内容 | 申出者 | 提出方法 |
第1号 | 産前産後休業をした者 | 事業主 | 事業主経由で提出 |
第2号 | 育児休業をした者 | 本人 | 本人が申出書を提出 |
第3号 | 小学校就学前の子の養育により報酬が下がった者 | 本人 | 本人が申出書を提出 |
第4号 | 特別な事情により報酬が下がった者(大臣認定) | 事業主 | 事業主経由で提出 |
<特例の内容>
・報酬が下がっても、年金額算定のための平均標準報酬月額には「高い時の額(低下前)」を反映
・実際の保険料は、減額後の標準報酬月額に基づいて算出
→ 年金額の算定と保険料の算定が分離されている
<申出のタイミング>
・原則:報酬が下がった月の翌月末までに申出が必要
・申出がなければ、特例は適用されず、年金額も減ってしまう可能性あり
<注意点>
・自動適用ではなく、申出が必須
・本人が提出する類型(第2号・第3号)では忘れずに手続きすること!
<関連書類(例)>
・「育児等による報酬の特例に関する申出書」
・「産前産後休業等終了時報酬月額変更届」など
<キーワード>
・年金額保護、標準報酬月額の読み替え、短時間勤務、育児等
呼び方 | 内容 | よく出る場面 |
第1号〜第4号(この特例での分類) | 特例的な月額変更の申請要件のタイプ分け | ※この制度専用ワード! |
第1号被保険者〜第3号被保険者 | 国民年金の保険者種別 | 国年や基礎年金の話で出てくる |
第1号厚生年金被保険者(など) | 任意単独被保険者や高齢者などの分類 | 厚年や高齢被保険者の話で出てくることがある |
【産前産後期間中の取扱い|厚生年金と国民年金の比較】
<共通点>
・両制度とも、出産予定日を基準に「産前42日(多胎は98日)+産後56日」の計4か月間
→ この期間の保険料が免除される制度がある!
<厚生年金保険(会社員・公務員など)>
・名称:産前産後保険料免除(健康保険とセットで免除される)
・対象:厚生年金の被保険者
・特徴:
→ 保険料が免除されても、将来の年金額には満額で反映される
→ 事業主が申請手続きを行う(本人ではない)
<国民年金(第1号被保険者)>
・名称:産前産後期間の保険料免除制度(2019年4月〜)
・対象:第1号被保険者(自営業・学生・無職など)
・特徴:
→ 本人が市区町村または年金事務所に申請が必要
→ 免除された期間も、年金額に満額で反映される
→ 学生納付特例や免除制度よりも「優先される制度」扱い
<まとめ>
・どちらにも制度あり!(=共通項)
・厚生年金は事業主が申請、国民年金は本人が申請
・どちらも「保険料払ってないのに将来の年金には反映」されるやさしい制度✨
【国民年金|産前産後免除と継続免除・猶予の取扱い】
<ポイント>
・産前産後免除の期間(原則4か月間)が、もともとの「免除・猶予期間」と重なった場合でも、
→ 産前産後免除が終わったあとの翌年度について、「継続申請」として免除・猶予の審査が行われる!
<たとえば>
・令和3年7月〜令和4年6月:継続免除を受けていた
・令和4年5月〜8月:産前産後免除の対象(出産)
→ この人は、令和4年9月〜令和5年6月の「新年度」についても、新たな申請を出さなくても、
自動的に継続審査が行われる!
<まとめ>
・産前産後免除の期間中であっても、それまで免除・猶予を受けていた人は「継続審査」の対象になる
・産前産後免除が終わったからといって、急に通常納付には戻されない
・安心して出産・育児に専念できるよう配慮された制度!
この記事では産前産後における厚生年金の給付についてご紹介しました。
次回に続きます!


