[基礎・厚生]繰上げ受給ルール
- 筒井

- 7月28日
- 読了時間: 5分
更新日:8月18日
ここでは繰上げ受給ルールについてお伝えします。
【老齢厚生年金|繰上げ受給中に65歳を迎えた在職者の計算ルール】
<対象者>
老齢厚生年金を繰上げ受給中の者
65歳に達した時点で、厚生年金保険の被保険者である
<ルール概要>
老齢厚生年金の年金額(報酬比例部分)は、
「被保険者資格を喪失した月の前月までの期間」をもとに計算される
つまり、65歳時点で在職中(=被保険者のまま)である限り、
その後の被保険者期間は年金額に反映されない
退職して資格喪失するまでは、「最終確定」されない
<ポイント>
在職中に繰上げていたとしても、65歳時点で退職しなければ
その月時点での報酬比例部分の年金額は増えない
年金額は資格喪失によって最終確定される
<具体例>
65歳の誕生日:10月5日
65歳時点では勤務継続中(=被保険者)
11月末に退職 → 資格喪失月:12月
→ 年金額は「資格喪失月の前月=11月」までの被保険者期間で計算される
<補足>
繰上げ支給中の老齢厚生年金は報酬比例部分のみ
定額部分は支給されない(※定額部分は原則廃止済)
タイミング | 状況 | 支給の扱い |
63歳〜 | 繰上げ中 | 報酬比例部分のみ支給(在職でも支給) |
65歳 | 在職 | 支給継続、年金額はまだ確定しない |
65歳以降 | 退職し資格喪失 | その前月までの加入記録で年金額が最終確定される |
【国民年金|繰上げ支給と寡婦年金の関係】
<基本ルール>
・寡婦年金の受給権者が、老齢基礎年金を「繰上げ支給」により受給した場合、
→ 老齢基礎年金の受給権を取得した時点で、寡婦年金の受給権は消滅する。
<根拠>
・国民年金法附則 第9条の2 第5項(法附則9の2-V)
<ポイント>
・繰上げ支給も「老齢基礎年金の受給権取得」とみなされるため、
→ 寡婦年金の支給より繰上げを選ぶと、その時点で寡婦年金はもらえなくなる。
<関連注意点>
・繰下げ支給は請求していない状態のため、寡婦年金との関係は生じない。
・繰上げを選ぶと、将来的な寡婦年金の受給権が失われる可能性があるので要注意。
【国民年金|付加年金の繰上げ時の取扱い】
<付加年金とは>
・国民年金第1号被保険者が、定額保険料に上乗せして納める任意の制度
・老齢基礎年金に上乗せして「年額:200円 × 納付月数」が支給される
<繰上げとの関係>
・老齢基礎年金を「繰上げ支給」した場合は、付加年金も同様に減額される
・減額率:老齢基礎年金と同じ(月あたり0.4%減額)
・生涯にわたって減額された付加年金が支給される
<厚生年金との違い>
・厚生年金(報酬比例部分)は「繰上げ制度そのものがない」ため減額なし
・よって、繰上げの影響を受けるのは「老齢基礎年金+付加年金」の部分のみ
<注意点>
・「付加年金は繰上げしても減額されない」と書かれていたら誤り!
【老齢基礎年金|繰上げ減額率の計算方法】
<対象>
老齢基礎年金を繰上げて受給する場合、65歳に達する月の「前月」までの繰上げ月数に応じて年金額が減額される。
<減額率の計算式>
減額率(%)= 0.4% × 繰上げ月数
<具体例>
60か月(=5年)繰上げた場合 → 0.4% × 60か月 = 24%減額
<カウントの起点>
「請求月の属する月」から、「65歳に達する日の属する月の前月」までをカウントする。
<ポイント>
・繰上げによる減額は一生続く(生涯減額)
・「0.4%/月」は令和4年4月以降の請求に適用
<根拠法令>
法附則7の3第4項、令和6年附則第3条、令和3年附則第6条
区分 | 繰上げ支給 | 繰下げ支給 |
対象年齢 | 60歳〜65歳未満で請求 | 65歳以降で請求(75歳まで) |
調整内容 | 減額(生涯) | 増額(生涯) |
調整率 | 月ごとに0.4% 減額 | 月ごとに0.7% 増額 |
計算式 | 0.4% × 繰上げ月数 | 0.7% × 繰下げ月数 |
上限 | 最大24% 減額(60歳で請求時) | 最大84% 増額(75歳で請求時) |
注意点 | 一度請求すると取消不可 | 在職老齢年金との併用で支給停止に注意 |
【計算前提条件】
通常受取額(:月額 6.5万円(年間 78万円)
繰上げ受賞額(60歳開始): 月額 4.94万円(▲24%)
繰上:60歳
通常開始年齢:65歳
付着率:繰上げは月ごとに
比較方法:
年齢ごとの正規賃金額を比較
損益分岐年齢=現状額が逆転する最初の年齢
年齢 | 繰上げ累計額 | 通常累計額 | 優位な受給方法 |
65歳 | 296万円 | 0万円 | 繰上げ有利 |
70歳 | 593万円 | 390万円 | 繰上げ有利 |
75歳 | 889万円 | 780万円 | 繰上げ有利 |
80歳 | 1186万円 | 1170万円 | 繰上げ有利 |
81歳 | 1245万円 | 1248万円 | 通常有利 |
85歳 | 1482万円 | 1560万円 | 通常有利 |
90歳 | 1778万円 | 1950万円 | 通常有利 |
基礎年金だけで考えても81歳以降繰上げの方が損になる。
厚生年金もあるともっと損をする。
繰上げできない人ルール【老齢基礎年金】
区分 | 内容 |
① 65歳前に受給権を取得できない人 | 原則として、受給資格期間を満たしていない人は繰上げできない(受給権がない) |
② 障害基礎年金の受給権者 | 障害基礎年金と併給できないため、老齢基礎年金の繰上げはできない |
③ 遺族基礎年金の受給権者 | 遺族基礎年金と併給できないため、老齢基礎年金の繰上げはできない |
④ 老齢厚生年金と同時繰上げでない場合 | 原則として、老齢厚生年金と同時に繰上げる必要あり(片方だけの繰上げはできない) |
繰上げできない人ルール【老齢厚生年金】
区分 | 内容 |
① 65歳前に受給権を取得できない人 | 原則として、受給資格期間を満たしていない人は繰上げできない(受給権がない) |
② 障害厚生年金の受給権者 | 障害厚生年金と併給できないため、老齢厚生年金の繰上げはできない |
③ 遺族厚生年金の受給権者 | 遺族厚生年金と併給できないため、老齢厚生年金の繰上げはできない |
④ 老齢基礎年金と同時繰上げでない場合 | 原則として、老齢基礎年金と同時に繰上げる必要あり(片方だけの繰上げはできない) |
この記事では繰上げ受給ルールについてご紹介しました。
次回に続きます!


