■労働基準法(変形時間労働制)
更新日:8月9日
ここでは変形時間労働制についてお伝えします。
【変形労働時間制の基本】
<概要>
変形労働時間制とは、一定期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、特定の日又は週に1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることができる制度。
変形労働時間制には、1か月単位、1年単位及び1週間単位の非定型的変形労働時間制がある。
フレックスタイム制は、清算期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、労働者が始業及び終業の時刻を決定する制度。
<法定労働時間の総枠>
変形期間又は清算期間における法定労働時間の総枠は、原則として次の式により算定する。
40時間×変形期間又は清算期間の暦日数÷7
【1か月単位の変形労働時間制(労基法32条の2)】
<概要>
1か月以内の一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間以内となる範囲で、特定の日又は週に1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることができる。
<導入手続>
労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、次の事項を定める。
常時10人未満の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成義務はないため、就業規則その他これに準ずるものにより定めることができる。
①対象労働者の範囲
②対象期間及び起算日
③対象期間中の各日及び各週の労働時間
④労使協定による場合は、その有効期間
労使協定により定めた場合は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
<労働日及び労働時間の特定>
対象期間中の各日及び各週の労働時間は、対象期間の開始前に具体的に特定しなければならない。
使用者が業務の都合により任意に労働日又は労働時間を変更できる制度とすることはできない。
<労働時間の上限>
1日及び1週間の労働時間について、1年単位の変形労働時間制のような個別の上限は定められていない。
ただし、対象期間を平均して1週間当たり40時間以内でなければならない。
<割増賃金(労基法32条の2第1項、37条)>
あらかじめ特定された日又は週の労働時間の範囲内であれば、1日8時間又は1週40時間を超えて労働しても法定時間外労働とはならず、時間外労働に係る割増賃金は発生しない。
ただし、あらかじめ特定された労働時間を超えて労働した時間は、時間外労働となり、割増賃金の支払が必要となる。
【週44時間の特例措置(労基法40条、労基則25条の2)】
<対象事業>
常時10人未満の労働者を使用する次の事業では、1週間の法定労働時間を44時間とすることができる。
①商業
②映画・演劇業。ただし、映画の製作の事業を除く。
③保健衛生業
④接客娯楽業
<適用範囲>
1日の法定労働時間は8時間であり、週44時間の特例によって1日の法定労働時間が延長されるものではない。
1か月単位の変形労働時間制及びフレックスタイム制では、週44時間の特例を利用できる。
1年単位及び1週間単位の非定型的変形労働時間制では、週44時間の特例を利用できず、週40時間を基準とする。
【1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)】
<概要>
1か月を超え1年以内の対象期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間以内となる範囲で、特定の日又は週に1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることができる。
<導入手続>
労使協定により、次の事項を定めなければならない。
①対象労働者の範囲
②対象期間及び起算日
③特定期間
④対象期間中の労働日及び各労働日の労働時間
⑤労使協定の有効期間
労使協定は、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則にも定めなければならない。
<特定期間>
特定期間とは、対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。
特定期間は、労使協定によりあらかじめ定めなければならない。
<労働時間及び労働日数の限度(労基則12条の4)>
1日の労働時間は10時間以内、1週間の労働時間は52時間以内とする。
対象期間が3か月を超える場合、次の制限がある。
①48時間を超える週が連続する場合は3週間以下
②対象期間をその初日から3か月ごとに区分した各期間において、48時間を超える週は3週以下
対象期間が1年の場合、労働日数は原則として280日以内とする。
対象期間が3か月以内の場合は、労働日数の限度は適用されない。
連続して労働させることができる日数は、原則として6日以内とする。
ただし、特定期間については、1週間に1日の休日が確保できる範囲で、最長12日まで連続して労働させることができる。
<対象期間を1か月以上の期間ごとに区分する場合(労基法32条の4第1項4号)>
労使協定では、最初の期間について労働日及び各労働日の労働時間を特定し、それ以外の各期間について労働日数及び総労働時間を定めることができる。
各期間の労働日及び各労働日の労働時間は、その期間の初日の少なくとも30日前までに、過半数労働組合又は過半数代表者の同意を得て、書面により定めなければならない。
<最初の期間以外の労働日等の特定(労基法32条の4第1項4号かっこ書)>
最初の期間以外の各期間における労働日及びその労働日ごとの労働時間は、各期間の初日の少なくとも30日前までに、過半数代表者等の同意を得て、書面により定めなければならない。
<労働日及び労働時間の途中変更>
対象期間の開始前に特定した労働日及び労働時間は、業務の都合によって任意に変更することはできない。
労使協定に「労使双方の合意により変更できる」と定めても、対象期間の途中で特定期間や労働日等を変更することはできない。
【フレックスタイム制(労基法32条の3)】
<概要>
フレックスタイム制とは、清算期間における総労働時間を定め、その範囲内で労働者が各日の始業及び終業の時刻を自ら決定する制度。
始業時刻又は終業時刻の一方のみを労働者に委ねる制度は、フレックスタイム制に該当しない。
<労働時間の把握義務(労基法32条の3)>
フレックスタイム制を採用した場合であっても、使用者は、各労働者の実労働時間を把握しなければならない。
労働者が始業及び終業の時刻を自ら決定することは、使用者が労働時間を把握する義務を免れるものではない。
<清算期間>
清算期間は3か月以内とする。
清算期間を平均して、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えないように、清算期間における総労働時間を定めなければならない。
<導入手続(労基法32条の3第1項)>
就業規則その他これに準ずるものに、労働者が始業及び終業の時刻を決定することを定め、労使協定により次の事項を定めなければならない。
①対象労働者の範囲
②清算期間
③清算期間の起算日
④清算期間における総労働時間
⑤標準となる1日の労働時間
⑥コアタイムを設ける場合は、その開始及び終了の時刻
⑦フレキシブルタイムに制限を設ける場合は、その開始及び終了の時刻
<届出及び有効期間(労基法32条の3第4項)>
清算期間が1か月以内の場合は、労使協定の届出は不要。
清算期間が1か月を超える場合は、労使協定に有効期間を定め、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
<コアタイム及びフレキシブルタイム>
コアタイム及びフレキシブルタイムを設けるかどうかは任意。
コアタイムが1日の労働時間の大部分を占め、始業及び終業の時刻を労働者が実質的に選択できない場合は、フレックスタイム制に該当しない。
<清算期間が1か月を超える場合の上限>
清算期間全体を平均して1週間当たり40時間以内とすることに加え、清算期間を1か月ごとに区分した各期間について、1週間当たりの労働時間が50時間を超えてはならない。
週50時間は清算期間全体の上限ではなく、各1か月の期間における週平均の上限である。
<実労働時間が総労働時間を超えた場合(労基法24条、32条の3)>
清算期間における実労働時間が総労働時間を超えた場合、その超過時間に対応する賃金は、その清算期間の賃金支払日に支払わなければならない。
超過時間を次の清算期間の総労働時間の一部に充当し、その賃金の支払を次の清算期間に繰り越すことは、賃金全額払の原則に反するため認められない。
法定労働時間の総枠を超えた部分は時間外労働となる。
【1週間単位の非定型的変形労働時間制(労基法32条の5)】
<概要>
日ごとの業務に著しい繁閑の差が生じる事業について、1週間の労働時間を40時間以内としつつ、1日について10時間まで労働させることができる制度。
<対象事業>
常時30人未満の労働者を使用する次の事業で採用できる。
①小売業
②旅館
③料理店
④飲食店
<導入手続>
労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
労使協定では、1週間の労働時間を40時間以内と定めなければならない。
<各日の労働時間の通知>
使用者は、原則として、その週の開始前に各日の労働時間を書面により労働者へ通知しなければならない。
緊急でやむを得ない事由がある場合は、変更する日の前日までに書面により通知して、あらかじめ通知した労働時間を変更することができる。
<労働時間の上限>
1週間40時間以内、1日10時間以内とする。
週44時間の特例措置は適用されない。
【変形労働時間制における時間外労働】
<基本>
変形労働時間制を採用していても、制度により法定労働時間とされた時間を超える労働は時間外労働となる。
あらかじめ特定された労働時間を超えたかどうかだけでなく、1日、1週間及び変形期間全体の各段階で判定する。
<法定労働時間の総枠>
変形期間全体において、次の総枠を超えた時間は時間外労働となる。
40時間×変形期間の暦日数÷7
週44時間の特例が適用される場合は、40時間を44時間として算定する。
【労働時間の状況の把握(労働安全衛生法66条の8の3、安衛則52条の7の3)】
<把握義務>
事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。
<把握方法>
労働時間の状況は、タイムカード、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録その他の客観的な方法その他適切な方法により把握する。
<記録の保存>
事業者は、把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。
この記事では変形時間労働制まとめについてご紹介しました。
次回に続きます!
