遺族厚生年金の給付②
- 筒井

- 8月1日
- 読了時間: 5分
更新日:8月16日
ここでは遺族厚生年金の給付についてお伝えします。
②加算・併給調整・周辺制度編
・【中高齢寡婦加算】
・【経過的寡婦年金】
・【経過的寡婦加算】
・【65歳以上の受給者の併給調整】
【寡婦加算(中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算まとめ】
<中高齢寡婦加算(現行の寡婦加算)>
・夫の死亡により遺族厚生年金を受給している40歳〜64歳の妻に支給される加算
・「子のある遺族基礎年金」が消滅した場合(子が18歳到達など)に上乗せ
<支給要件>
・夫が厚生年金の被保険者で死亡している
・妻が遺族厚生年金の受給権者
・妻が40歳以上65歳未満
・子のいない寡婦(=遺族基礎年金を受けていない)
・夫が死亡時に以下のいずれかに該当
- 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていた
- 障害厚生年金(1級または2級)の受給権者
<支給額>
・定額加算(令和6年度 年額585,700円)
<支給停止>
・妻が65歳になり、老齢基礎年金を受けられるようになったとき
<経過的寡婦加算(特例)>
・昭和31年4月1日以前生まれの妻に対する経過措置
・現行の中高齢寡婦加算とは別に存続する特例
<支給額>
・老齢基礎年金の満額 × 3/4
(令和6年度 約598,400円)
<注意点>
・新規発生はなし(すでに受給している人のみ対象)
・試験では「経過的寡婦加算」として区別して出題
<まとめポイント>
・「寡婦加算」と出たら基本は=中高齢寡婦加算
・経過的寡婦加算は古い特例(レアケース)
・どちらも「夫が亡くなった妻」が対象 → 夫が生きている間はもらえない
【経過的寡婦年金】
<制度の概要>
・老齢基礎年金の支給要件(原則10年)を満たしていない
**昭和31年4月1日以前生まれの妻**を対象とした特例年金
・夫が厚生年金保険の被保険者期間10年以上で亡くなった場合、
その妻に対し「経過措置」として年金が支給される
<支給要件>
① 昭和31年4月1日以前生まれの妻であること
② 夫が厚生年金保険の被保険者期間10年以上で死亡していること
③ 妻自身が老齢基礎年金を受け取る資格(受給権)を持っていないこと
④ 遺族基礎年金や老齢年金など、他の年金を受けていないこと
⑤ 60歳以上であること(支給開始年齢)
<支給額>
・定額部分とほぼ同額(令和6年度:年額 約598,400円)
・物価により毎年度見直される(※老齢基礎年金と同様)
<注意点>
・配偶者加給年金や振替加算などと**併給できない(選択制)**
・**経過的“寡婦年金”は老齢基礎年金の範囲**
→ 遺族厚生年金とはまったく別制度!
<混同注意ポイント>
・「中高齢寡婦加算」とも「特例遺族厚生年金」とも異なる制度
・あくまで“基礎年金の制度上の特例”としての年金
・支給額が似ているが、**加算ではなく単独の年金**であることに注意
【経過的寡婦加算】
<制度の目的>
・65歳到達により、遺族厚生年金から自分の老齢厚生年金に切り替わったときに、
本来なら加給年金等を受けられない妻を“救済”するための加算措置
<支給対象>
・昭和31年4月1日以前生まれの妻で、以下のすべてに該当する場合:
① 遺族厚生年金の受給権者だった
② 65歳に達し、自分の老齢厚生年金の受給権が発生した
③ 老齢厚生年金に“加給年金”などの加算がつかない
④ 振替加算の対象でもない(or 振替加算を選ばなかった)
<支給の仕組み>
・65歳以降、老齢厚生年金の支給開始と同時に「経過的寡婦加算」が上乗せされる
・支給額は人によって異なり、以下の計算で決まる👇
<支給額の計算>
遺族基礎年金額の3/4(満額の老齢基礎年金 × 妻の生年月日による係数)
→ この差額が「経過的寡婦加算」として支給される(年額)
※係数は0/480 〜 348/480(生年月日が若くなるほど減額)
<注意ポイント>
・振替加算とは選択制(同時支給は不可)
・「加算」と名前がついているが、年金本体にくっつく加算ではなく“別枠の上乗せ支給”
・この制度は“過渡期救済の特例”であり、新規該当者は今後どんどん減る
<まとめ>
・65歳時に加給年金も振替加算もつかない人への“最後の救済”
項目 | 中高齢寡婦加算 | 経過的寡婦加算 |
対象制度 | 老齢厚生年金 | 老齢厚生年金(特別支給) |
支給対象者 | 厚生年金の受給資格のある中高齢寡婦 | 特別支給の老齢厚生年金の女性 |
年齢要件 | 65歳未満(通常60歳〜64歳) | 64歳(1年間) |
その他の要件 | 夫の厚年加入・年金受給権あり | 長期加入(被保険者期間44年以上)など |
支給額のイメージ | 約60万円(定額) | 老齢基礎年金相当額との差額 |
他の年金との調整 | 老齢厚生年金に加算 | 特別支給の厚生年金に加算 |
期間 | 原則65歳まで | 原則64歳の1年間 |
【65歳以上の受給者の併給調整】
<条件>
以下に当てはまる場合、併給調整あり:
・受給者が65歳以上
・老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方の受給権がある
・遺族基礎年金の受給権はない(=子のない配偶者など)
<支給される年金額の考え方>
以下のうち「多い方」が支給される:
① 遺族厚生年金の報酬比例部分 × 2/3
② 本人の老齢厚生年金の報酬比例部分 × 1/2
→ ※報酬比例部分のみが比較対象。加給年金、定額部分は含めない。
【注意ポイント】
・これは「65歳以上」の人に限定された調整ルール!
・65歳未満では選択受給となり、基本的に「どちらか一方のみ受給」
・年金の種類(基礎/厚生)や、加算の有無によって併給の可否が変わるため、全体像をつかんでおくことが大切!
【豆知識】
・「中高齢寡婦加算」「寡婦加算」は、老齢厚生年金をもらうと支給停止になる
→ 加算系は“老齢年金と引き換えに消える”イメージで◎
【老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給調整(重複支給のルール)】
<基本ルール>
・老齢厚生年金と遺族厚生年金は、両方の受給権があっても “全額はもらえない”
・原則として「どちらか一方を選択して受給」
<ただし、調整して“両方の一部”をもらえるケースがある>
→ 65歳以上の受給者に多い!
この記事では遺族厚生年金の給付についてご紹介しました。
次回に続きます!


