健康保険の傷病手当
- 筒井

- 2024年8月23日
- 読了時間: 7分
更新日:8月5日
ここでは健康保険の傷病手当についてお伝えします。
保険証やマイナンバーカードを提出し、一部負担金を支払うことで
保険医療機関で治療し、保険薬局で調剤をしてもらえます。
70歳未満・・・3割負担
70歳以上・・・2割負担
70歳以上の一定所得者・・・3割負担
【療養費の事後請求】
海外など、やむおえず保険医療機関外で実費で治療を受けた場合
立て替えた医療費を後日請求できる。
●傷病手当金
被保険者がけがや病気で3日以上休職し、報酬を受け取れない場合
4日以降~1年6ヶ月間支給される。
継続給付(傷病・出産手当金)
1年以上被保険者であった者は、資格喪失後でも法定支給期間の給付が受けられる。
項目 | 内容 |
資格喪失前に労務不能の状態であること | ✅ 必須条件! |
かつ、継続して療養中であること | ✅ 必須条件その② |
→ 条件を満たせば | 資格喪失後も傷病手当金を継続して受け取れる! |
【傷病手当金|支給開始日(待期期間)】
<根拠>
・健康保険法 第99条第1項
<支給要件>
・業務外の傷病により、労務に服することができないとき
・その状態が「連続して3日間」継続すること(=待期完成)
<待期期間の考え方>
・労務不能になった日を「1日目」として起算
・「3日間」は連続した暦日でカウント(土日祝も含む)
・この3日間は支給対象外
・「4日目」から傷病手当金が支給される
<補足>
・待期期間中に給与の支給があっても、待期日数にはカウントされる
・ただし、給与と傷病手当金の支給は原則として調整される(全額支給なら不支給)
<まとめ>
・支給開始は「労務不能となった日から起算して3日を経過した日」=4日目から
【傷病手当金と老齢年金との支給調整ルール】
<対象となる調整>
・傷病手当金の継続給付と、老齢基礎年金や老齢厚生年金等が重複する場合に支給調整される。
<対象外となる者>
・「傷病手当金を受けることができる日雇特例被保険者または元日雇特例被保険者」は調整の対象外となる。
<支給打切りではない>
・調整が行われる場合でも、必ずしも傷病手当金が全額支給停止されるわけではない。
<差額支給のルール>
・老齢基礎年金や老齢厚生年金等の額が、傷病手当金よりも少ないときは、その差額が傷病手当金として支給される。
【保険給付の譲渡・差押の禁止と死亡後の相続との違い】
<原則:譲渡・差押えの禁止>
健康保険法では、保険給付(傷病手当金・出産手当金など)は
「譲り渡し」「担保に供する」「差し押さえる」ことを禁止している。
<根拠・理由>
保険給付は、生活保障を目的とした“公法上の給付”であり、
本人の生活を保護する趣旨から、自由な処分や債権者の差押を許さない。
(=民法の一般原則とは異なる特別ルール)
<例:禁止される行為>
・金銭的に困っている知人に給付権を譲る → ×
・給付を担保にして借金する → ×
・借金の返済として差押される → ×
<例外:死亡後の給付の扱い>
被保険者が死亡した後に発生していた保険給付(未支給分)は、
「公法上の金銭債権」として、相続人が請求・受領することができる。
→ この場合は「確定済の債権」を相続人が受け取るだけなので、禁止対象外。
<未支給給付の請求手続>
① 相続人が所定の「未支給給付請求書」を提出する
② 必要書類(戸籍謄本、住民票、被保険者証の写しなど)を添付
③ 保険者(協会けんぽや健康保険組合)が内容を確認し、支給する
※ 複数の相続人がいる場合は、「代表者」を決めて一括請求するのが原則。
<相続人の範囲(法定相続人)>
以下の順で、民法に定められた相続人が請求できる:
1. 配偶者 + 子(直系卑属)
2. 配偶者 + 父母(直系尊属)
3. 配偶者 + 兄弟姉妹
※ 配偶者は常に相続人となる。
<ポイントの違い>
・生存中の給付 → 処分不可(譲渡・担保・差押すべて禁止)
・死亡後の未支給給付 → 相続人に承継され、請求・受領が可能
<メモ>
・「本人のための生活保障」がキーワード
・死亡後の給付は“公法上の金銭債権”であり相続可能
・請求者は“法定相続人”であること
・“生前の譲渡=絶対ダメ/死亡後の相続=OK”の対比を押さえる
・代表者による一括請求の手続も出題されやすい
【傷病手当金|死亡日の当日分まで支給される】
・被保険者が死亡しても、死亡日の「当日」までは被保険者資格を有する。
・したがって、傷病手当金の支給期間中に死亡した場合、
死亡日の「当日分」までは、傷病手当金が支給される。
・つまり、「死亡した日」までは支給対象とされるが、
死亡翌日以降は当然ながら対象外となる。
【傷病手当金の時効】
・支給を受ける権利の消滅時効:2年
・時効の起算日:
→ 労務不能であった日ごとに、その「翌日」が起算日となる
・補足:
×「労務不能期間の初日から起算」ではない点に注意
◯ 各日ごとに独立して「翌日」から2年の時効期間がスタートする
・根拠法令:
健康保険法 第193条、昭和30年9月7日保険発第199号の2
【傷病手当金の継続給付|資格喪失前の出勤による不支給のケース】
<傷病手当金の継続給付の支給要件|労務不能状態にあることの要件>
・被保険者でなくなった後も、一定要件を満たすと「傷病手当金の継続給付」を受けられる。
<主な要件>
① 資格喪失日(令和5年4月1日)の前日まで、引き続き1年以上の被保険者であること
② 資格喪失時点で、すでに傷病手当金の支給を受けている、または労務不能であること
<例ケース>
・甲は令和5年4月1日に被保険者資格を喪失(=喪失日の前日は3月31日)
・3月27日から療養のため労務不能だったが、業務引継ぎのため3月28日~31日は出勤した
<ポイント>
→ ①の「1年以上の被保険者であったこと」は満たしている
→ しかし、②の「資格喪失日に労務不能であること」を満たしていない(=直前まで出勤していた)
<結論>
→ このケースでは「継続給付」の支給要件を満たさない
→ よって、資格喪失後は傷病手当金の継続給付は受けられない
【傷病手当金の継続給付には1年以上の被保険者期間が必要】
<要件>
・傷病手当金の継続給付(退職後など)を受けるには、資格を喪失した日の前日までに継続して1年以上健康保険の被保険者である必要がある
<重要な取扱い>
・共済組合員であった期間は、健康保険法上の「被保険者期間」には含まれない
・したがって、共済組合員期間と健康保険の被保険者期間を合算しても、1年以上にならないと継続給付は受けられない
<例>
・健康保険の被保険者として7か月加入し、傷病手当金受給開始から3か月経過後に退職
・被保険者期間は7か月+3か月=10か月となり、1年に満たないため継続給付は不可
<結論>
・退職後の傷病手当金の継続給付を受けるには、健康保険の被保険者期間が1年以上であることが必要
【傷病手当金の申請と他制度との関係】
<申請の必要性>
・傷病手当金の支給を受けようとする者は、健康保険法施行規則第84条に掲げる事項を記載した申請書を保険者に提出しなければならない。
<他制度との重複確認>
・同一の疾病または負傷およびこれにより発した疾病について、
・労災保険法(昭和22年法律第50号)
・国家公務員災害補償法(昭和26年法律第191号)
・地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)
などにより、すでに給付を受けている場合や、これから受けようとする場合も対象。
<重複受給を防ぐ手続き>
・他制度に基づく給付を受けている、または受けようとする場合には、その旨を記載した申請書を保険者に提出する必要がある。
【複数の傷病に係る傷病手当金の支給】
<前提>
・傷病手当金の支給を受けている間に、別の新たな傷病により労務不能となった場合の取扱い
<取扱い>
・後の傷病に係る待期期間を経過した日を「支給を始める日」として、後の傷病による傷病手当金の額を算定する
・その額と、前の傷病による傷病手当金の額を比較して、いずれか多い額を支給する
<注意点>
・後の傷病に係る「支給を始める日」が確定するためには、前の傷病による支給が終了または停止している必要がある
・したがって、前の傷病の支給が終了または停止した日において、後の傷病手当金の額を再度算定する必要はない
<根拠>
・健康保険法第99条、健康保険法施行規則第84条の2第VII号、平成27年12月18日事務連絡
【自宅待機中の被保険者資格の取得日】
<場面>
・適用事業所に新たに使用されることになったが、自宅待機となった場合
<要件>
・雇用契約がすでに成立している
・休業手当が支払われる予定である
<被保険者資格の取得日>
・休業手当の支払いの対象となった日の初日
<標準報酬月額の決定>
・資格取得時の標準報酬月額は、実際に支払われる休業手当に基づいて決定
・その後、自宅待機が解消された場合でも、標準報酬月額の随時改定の対象となる
この記事では健康保険の傷病手当についてご紹介しましました。
次回へ続きます!


