入院時の健康保険給付
- 筒井

- 8月4日
- 読了時間: 7分
更新日:8月15日
ここでは入院時の健康保険給付についてお伝えします。
●療養給付
保険証やマイナンバーカードを提出し、一部負担金を支払うことで
保険医療機関で治療し、保険薬局で調剤をしてもらえます。
70歳未満・・・3割負担
70歳以上・・・2割負担
70歳以上の一定所得者・・・3割負担
【療養費の事後請求】
海外など、やむおえず保険医療機関外で実費で治療を受けた場合
立て替えた医療費を後日請求できる。
項目 | 療養の給付対象? | メモ |
医師の診療・投薬・注射など | ✅ される | 原則的な給付 |
入院時の食事(食事療養費) | ✅(一部) | 定額自己負担あり |
特定長期入院の生活費部分 | ❌されない | 医療じゃなく介護に近い |
正常分娩 | ❌されない | 生理現象とみなされる |
評価療養/選定療養 | ❌されない | 特別料金扱い(例:差額ベッド代) |
人工妊娠中絶 | ❌されない | ただし母体保護法に基づく場合は例外的にされることあり |
●入院時食事療養費
保険医療機関に入院した場合、保険証やマイナンバーカードを提出し
一部負担金(食事療養標準負担額)を支払うことで入院時に食事が支給されます。
つまり病院食を安く食べることができます。
<給付される額の計算方法>
食事療養費の給付額は、厚生労働大臣が定める「平均的な費用額(基準額)」をもとに算定されます。
・実際の食事費用がこの基準額以下であれば、【実費 − 標準負担額】が支給されます。
・実際の費用が基準額を超える場合は、【基準額 − 標準負担額】が支給され、それを超える分は自己負担(=実費)となる場合があります。
→ あくまで「基準額」を上限とした支給であり、それ以上の高額な食費については保険の対象外です。
<食事療養標準負担額(1食あたり)>
・一般:460円
・住民税非課税世帯(70歳未満):210円
・住民税非課税世帯(長期入院・過去1年間で90日以上入院):160円
→ 上記の金額は1食あたりで、1日3食提供されるのが通常です。
●入院時食事療養費(65歳以上)
<入院時食事療養費とは>
・保険医療機関に入院したとき、保険証やマイナンバーカードを提出し、
一部負担金(=食事療養標準負担額)を支払うことで、病院食が支給される。
・つまり、自己負担額はあるが、保険でカバーされた食事を安く受けられる。
<給付額の計算方法>
・給付の上限は、厚生労働大臣が定めた「基準額(=平均的な費用額)」まで。
・給付額の算定パターン:
・実費が基準額以下 →【実費 − 標準負担額】を支給
・実費が基準額超過 →【基準額 − 標準負担額】を支給
→超過分は自己負担となる可能性あり
<食事療養標準負担額(1食あたり)>
・一般 :460円
・住民税非課税世帯(70歳未満) :210円
・非課税世帯+長期入院(90日以上):160円
→ ※1日3食提供が通常
<注意点>
・「基準額」が上限のため、実費が高くても支給されるのはそこまで。
・高額な病院食(例:特別メニューなど)は保険給付対象外。
【入院時食事療養費|260円となる場合】
<根拠法令>
・健康保険法
・児童福祉法(小児慢性特定疾病児童等の規定)
・難病の患者に対する医療等に関する法律(指定難病患者の規定)
<対象となる者>
・児童福祉法に規定する「指定小児慢性特定疾病児童等」
・難病法に規定する「指定難病の患者」
・これらの者で、入院時に医師の管理下で食事の提供を受ける場合
<負担額>
・1食につき260円(1日3食を限度)
<通常額との比較>
・通常(低所得者以外):1食につき460円
・この特例:1食につき260円(軽減)
<趣旨>
・長期療養が必要な児童や難病患者の医療費負担を軽減し、継続的な治療・療養を受けやすくするため
●保険外併用療養費
厚生労働大臣が定めた高度な医療技術を用いた先進医療・治験に係る診療などの療養等(評価療養・患者申出療養)や、病床数が200以上の病院で紹介なしに初診を受けたり、特別室の提供等(選定療養)を受けたとき保険給付されます。
【健康保険法|選定療養まとめノート】
<選定療養とは>
・保険診療に上乗せして、患者が希望して特別なサービスを受ける場合に、追加費用を全額自己負担する仕組み。
・本来の「療養の給付」とは区別され、保険適用外(自己負担)となる。
<主な選定療養の例>
・差額ベッド代(特別療養環境室)
・180日超の入院に係る費用
・予約診療に係る費用(大病院の初診・再診など)
・先進医療に係る差額費用(※技術料は自己負担、診察や検査等は保険適用)
<180日超の入院について>
・一般病床での入院が180日を超えた場合、原則として選定療養の対象となり、追加費用が発生することがある。
・ただし、次のような「やむを得ない事情」がある場合は、選定療養とされないことがある:
- 病状が重篤で転院困難
- 継続的な専門治療が必要
- 受け入れ先(介護施設等)が見つからない
<試験対策ポイント>
・選定療養=療養の給付の対象外(全額自己負担)
・180日超の入院は、原則として選定療養(=追加費用負担)になる
・ただし「やむを得ない事情」があれば例外となる
・自己負担となるのは、あくまで「患者の選択によるサービス」が原則
・病院の都合で差額ベッドを使用させた場合などは選定療養に該当しない
【健康保険|移送費の支給要件と支給額】
<支給の目的>
・療養のため移送が必要な場合に、患者が負担した移送費の一部を支給する制度。
<支給額の原則>
・支給される移送費は、原則として「最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合」の費用を基に、保険者が算定する。
・算定された額から患者の一部負担(3割など)を差し引くことはない(=全額支給される)。
<出典・根拠>
・健康保険法 第97条
・健康保険法施行規則 第80条
<補足>
・写真の記述は「3割負担を差し引く」と誤っているため✖(誤り)とされている。
・その他の選択肢は正しい内容。
【第三者行為による療養費支給の届出義務まとめ】
<対象となる療養>
・療養の給付
・入院時食事療養費
・入院時生活療養費
・保険外併用療養費
→上記が「第三者の行為」により必要となった場合
<代表的な第三者の行為>
・交通事故
・暴行・傷害事件
・スポーツ中の事故(相手の過失によるもの)
・他人のペットによる咬傷
・他人の落下物による負傷
・建設現場等での飛来物事故
<届出内容(被保険者が提出)>
・第三者の氏名および住所
(不明な場合は「その旨」を記載)
・被害の状況(いつ・どこで・どのような状況で負傷したか)
<届け出書類>
・第三者行為による傷病届(※保険者によって名称が異なることもある)
・事故発生状況報告書(必要に応じて)
・交通事故証明書など(交通事故の場合)
<提出先>
・健康保険の保険者(例:協会けんぽ、健康保険組合など)
<提出期限>
・療養を受けることとなった原因が第三者によるものであると判明したら、
遅滞なく保険者に届け出る義務がある
<理由>
・保険者が加害者に対して損害賠償請求(求償)を行うために必要な手続き
【療養費の支給対象となる治療用装具】
<支給対象となるもの>
・義眼(眼球摘出後眼窩保護のために装着した場合)
・コルセット
<支給対象とならないもの>
・眼鏡(小児弱視等の治療用眼鏡を除く)
・補聴器
・胃下垂帯
・人工肛門受便器(ペロッテ)
【選定療養における費用負担の考え方】
<ケース>
・保険診療費:30万円
・選定療養(差額ベッドなど):10万円
<保険診療における自己負担>
・3割負担のため:30万円 × 3割 = 9万円
<選定療養の費用負担>
・全額自己負担:10万円
<支払う金額(自己負担分)>
・9万円(保険診療の3割負担)+ 10万円(選定療養の全額)= 合計19万円
<保険者から保険医療機関への支払い>
・30万円 − 9万円(自己負担分)= 21万円(保険給付分)
<根拠条文>
・健康保険法第7条の37第1項、第207条第2項
【介護保険法第51条の3第1項における平均的な家計】
<概要>
介護保険法第51条の3第1項では、特定介護保険施設における食事提供に関する費用の基準を定める際に「平均的な家計における食費の状況」を考慮することが規定されている。
<目的>
・施設利用者が過大な負担とならないよう、国民の平均的な生活水準に基づいた食費負担額を設定するため
・国の家計調査等を参考に、厚生労働大臣が基準額を決定
<具体的な使われ方>
1. 特定介護保険施設の食事提供に必要な平均的費用を算出
2. これを「平均的な家計における食費」の状況と比較
3. 厚生労働大臣が標準負担額(食費の基準額)を告示
4. 所得区分や特例要件に応じて減額措置あり
<関連する語句>
・特定介護保険施設:介護保険法に基づき、要介護者に介護サービスと食事を提供する施設
・標準負担額:利用者が自己負担する標準的な額(食費・居住費等)
・平均的な家計:国の統計で示される一般世帯の標準的な支出水準
この記事では入院時の健康保険給付についてご紹介しましました。
次回へ続きます!


