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労働組合

  • 執筆者の写真: 筒井
    筒井
  • 8月13日
  • 読了時間: 7分

ここでは労働組合についてお伝えします。



【労働組合の基本まとめ】


<定義>

・労働者が主体となって自主的に組織する団体

・労働条件の維持改善や経済的地位の向上を目的とする

・労働組合法に基づき、一定の要件を満たすと「労働組合」として法的保護を受ける


<要件(労組法第2条)>

・労働者が主体(使用者や監督的地位にある者は原則加入不可)

・組合の運営が自主的(使用者の支配介入禁止)

・主たる目的が労働条件の維持改善

・加入・脱退が自由

・組合費の徴収や会計が民主的・適正


<種類>

・単位組合:企業や事業所単位で組織

・産業別組合:同一産業の労働者が加入

・合同労組:企業外の労働者(パート・派遣など)も加入可

・全国中央組織(ナショナルセンター):複数産業別組合を束ねる(例:連合、全労連)


<権利(労働三権)>

・団結権:労働者が組合を結成・加入する権利

・団体交渉権:使用者と交渉する権利

・団体行動権:争議行為(ストライキなど)を行う権利


<ユニオンショップ協定>

・労働協約で、一定期間内に組合加入を義務づけるもの

・労組法上有効だが、特定組合加入の強制は制限あり


<労働組合の不当労働行為の保護>

・使用者による正当な組合活動への妨害は禁止(支配介入、差別待遇など)

・違反時は労働委員会が救済命令を出せる



【労働組合法|民事免責と同盟罷業】


<同盟罷業とは>

・労働者が団結して行うストライキのこと

・「罷業(ひぎょう)」はストライキを意味する法律用語

・団体行動権(憲法28条)の具体的な行使の一つ


<民事免責の規定(労組法8条)>

・正当な同盟罷業やその他の争議行為によって使用者が損害を受けても、

 労働組合やその組合員に損害賠償請求はできない

・目的・手段・態様が正当であることが条件


<趣旨>

・労働者の団結権・争議権を実効的に保障するため

・損害賠償リスクで正当な争議行為が萎縮しないようにする



【労働組合運営費と経済的援助の禁止】


<基本ルール>

・労働組合法第7条3号により、使用者は労働組合の運営費について経済的援助をしてはいけない。

・これは「支配介入の禁止」と呼ばれ、組合の自主性・独立性を守るための規定。


<理由>

・使用者が資金を出すと、組合が使用者寄りになり、本来の機能を果たせなくなる恐れがあるため。


<具体例:禁止される経済的援助>

・組合事務所の家賃や光熱費を全額負担する

・組合活動に必要な物品・交通費などを負担する

・組合員への特別手当や金銭援助を行う


<例外として認められるケース>

・賃金控除による組合費天引き(組合員の個別同意がある場合)

・労使協定や慣行による施設使用(会議室を組合事務所として貸す等)

・法律で特別に認められた支援

・業務に支障がない範囲での便宜供与(例えば郵便受け設置など)


<運営費の負担方法>

・原則として組合員(労働者)が組合費として実費負担する

・組合費は毎月の給与から天引きする方法が一般的(組合員の同意必須)



【労働組合と団体交渉の義務】


<ポイント>

・会社には、複数の労働組合が存在することがある

 (企業別組合・産業別組合・一部従業員だけの独立組合など)

・使用者(会社)は、正当な理由なく団体交渉を拒否することは「不当労働行為」として禁止されている(労組法7条2号)


<誤解しやすい点>

・「過半数組織の労働組合だけ」と交渉すれば良いわけではない

・正当な理由がなければ、他の労働組合との交渉にも応じる義務がある


<正当な理由の例>

・交渉事項が労働条件と無関係(政治活動・経営の純内部判断など)

・交渉を求める相手が、労働者の代表性を欠いている場合

・同一事項についてすでに交渉中で、短期間に繰り返し要求される場合(乱用防止)


<根拠条文>

・労働組合法7条2号



【ユニオン・ショップ協定まとめ】


<定義>

・事業主と特定の労働組合(締結組合)が結ぶ協定

・労働者がその組合に加入していることを雇用条件とする取り決め


<仕組み>

① 事業主と組合が協定を締結

② 採用時に「締結組合に加入」を条件として提示

③ 在職中に脱退・除名された場合、事業主は雇用を終了できる(ただし制限あり)


<目的>

・組合員の確保や組織力の維持・強化


<OKな範囲>

・協定組合に加入していることを条件にする

・加入資格を失った場合に雇用終了とする(合理的範囲)


<NGな範囲>

・他の労働組合に加入した/新しい組合を結成しただけで解雇する

・労働者の組合選択の自由や他組合の団結権を侵害する内容

→ この部分は無効(憲法28条、民法90条)


<ポイント>

・「特定の労働組合」=協定を締結している組合

・加入を促す(条件にする)のは事業主

・最高裁は一部有効/一部無効の判断(部分無効)



【誠実交渉義務違反と救済命令】


<根拠条文>

・労働組合法第7条第2号

 使用者が正当な理由なく労働組合との団体交渉を拒否し、または誠実に交渉しないことは不当労働行為に当たる。


<誠実交渉義務の内容>

・形式的に交渉の場を設けるだけでなく、実質的・真摯に協議することが求められる。

・必要資料を提出せず、虚偽説明、理由なき延期などは義務違反。


<典型例>

・団体交渉を繰り返し引き延ばす

・必要な情報・資料を提示しない

・最初から結論を決めて交渉に臨む

・虚偽の説明をする


<救済命令>

・労働委員会は、誠実交渉義務違反を認めた場合、「誠実に団体交渉に応じること」を命ずる救済命令を出せる。

・合意成立の見込みがなくても、原則として命令可能。

・ただし最高裁は「全く合意の見込みがない特別な場合」には義務違反とならない可能性も認めている。


<試験ひっかけポイント>

・「必ず命令できる」と断定している文は誤り。

・救済命令を出せるのは労働委員会であり、裁判所ではない。



【労働協約と署名・記名押印】


<根拠法令>

・労働組合法第14条

 労働組合と使用者(またはその団体)との間で締結する労働協約は、

 ・書面で作成し

 ・両当事者が署名し、または記名押印することによって効力を生ずる。


<趣旨>

・労働協約は、労働条件などに関する規範的効力(労働契約の内容を直接規律する効力)を持つため、厳格な成立要件が設けられている。

・口頭や署名押印なしの合意では、労働協約としての規範的効力は発生しない。


<判例>

・最三小判H13.3.13(都南自動車教習所事件)

 書面作成および署名または記名押印がない限り、労働組合と使用者の間に労働条件等についての合意があっても、労働協約としての規範的効力は生じない。



【労働協約による不利益変更の有効性(判例:H28.2E)】


<基本原則>

労働条件を一方的に不利益に変更することは原則不可(労働契約法8条・9条)。

・ただし、労働組合との労働協約による合意があれば有効となる場合がある。


<有効となる条件>

・協約締結に至る経緯が公正であること(経営状態や交渉過程を含む)。

・協約で定めた基準の内容が、全体として合理的であること。

・特定の組合員や一部労働者を狙い撃ちして不利益にしていないこと。


<無効となる場合>

・協約が特定労働者の排除や差別を目的としている場合。

・経緯や内容に合理性が認められない場合。

・労働協約の基準に反する労働契約部分は無効となり、基準が適用される。


<まとめ>

・署名捺印がある=合意の証拠となり、有効性の判断材料になる。

・しかし「合意済みだから常に有効」ではなく、公正・合理性の要件が必須。



【労働協約の地域的拡張(労働組合法第18条)】


<概要>

・特定地域の同種労働者の大多数が、同一の労働協約の適用を受けている場合、

 その協約の当事者の申立てにより、地域内の他の同種労働者・使用者にも強制的に適用できる制度。

・地域内の労働条件格差を是正するための仕組み。


<申立てできる人>

・当該労働協約を締結した当事者(労働組合または使用者団体)


<申立て先>

・地域が1都道府県内のみの場合:当該都道府県労働委員会

・地域が2つ以上の都道府県にまたがる場合、または全国的に重要な問題とされる場合:

 中央労働委員会


<決定までの流れ>

1. 協約当事者の一方または双方が申立て

2. 労働委員会が条件を審議し、拡張すべきか決議

3. 決議後、以下の機関が「拡張適用決定」を行う

 ・1都道府県内:当該都道府県知事

 ・複数都道府県にまたがる/全国的に重要:厚生労働大臣


<拡張適用の効果>

・地域内の同種労働者・使用者全員が、その労働協約の内容に拘束される


<ポイント>

・対象は「同じ地域」「同じ種類の労働者」

・条件は「大多数が同じ協約を適用」

・個人は直接申立てできない(協約当事者のみ)

・労働委員会→知事 or 厚労大臣という決定構造

・1都道府県か複数都道府県かで、担当機関が変わる




この記事では労働組合についてご紹介しました。

次回に続きます!











 


 
 

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