■労災保険法(不服申立て・時効・罰則)
更新日:7月25日
ここでは不服申立て・時効・罰則まとめについてお伝えします。
【不服申立て・時効・雑則まとめ(労災保険)】
<不服申立ての基本構造 法38条1項>
・保険給付に関する決定に不服がある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をすることができる
・審査請求に対する決定に不服がある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる
<保険給付に関する決定の範囲 法38条1項>
・審査請求の対象となる「保険給付に関する決定」とは、受給権者の権利に直接法律上の効果を及ぼす処分をいう
・保険給付を支給するか否かの決定及び保険給付の支給額に関する決定は、審査請求の対象となる
・業務上外の認定、給付基礎日額の認定及び傷病の治ゆ日の認定は、保険給付に関する決定の前提となる要件事実の認定にすぎず、それ自体は審査請求の対象とならない
・これらの認定に不服がある場合は、その認定に基づいて行われた保険給付に関する決定に対して審査請求をする
<審査請求 法38条1項、労働保険審査官及び労働保険審査会法7条~9条>
・請求先:原処分をした行政庁の所在地を管轄する都道府県労働局に置かれた労働者災害補償保険審査官
・起算日:原処分があったことを知った日の翌日
・期間:3か月以内
・正当な理由により期間内に審査請求をすることができなかったことを疎明した場合は、期間経過後でも審査請求をすることができる
・方法:文書又は口頭
<審査請求後3か月を経過しても決定がない場合 法38条2項>
・審査請求をした日から3か月を経過しても労働者災害補償保険審査官の決定がないときは、審査請求人は、審査請求が棄却されたものとみなすことができる
・この場合は、審査官の決定を待たずに、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる
<再審査請求 法38条1項、労働保険審査官及び労働保険審査会法38条・39条>
・請求先:労働保険審査会
・起算日:審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日
・期間:2か月以内
・正当な理由により期間内に再審査請求をすることができなかったことを疎明した場合は、期間経過後でも再審査請求をすることができる
・方法:文書のみ
<審査請求・再審査請求と時効の関係 法38条3項>
・審査請求及び再審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関して、裁判上の請求とみなされる
・審査請求又は再審査請求の手続中に時効期間が経過しても、それだけで保険給付を受ける権利が時効により消滅するものではない
<行政不服審査法の適用除外 法39条>
・保険給付に関する決定について行う審査請求及び再審査請求には、行政不服審査法第2章の規定(同法22条を除く)及び第4章の規定は適用されない
・保険給付に関する決定については、労災保険法及び労働保険審査官及び労働保険審査会法による特別の不服申立制度が適用される
<取消訴訟との関係 法40条>
・保険給付に関する決定の取消しの訴えは、原則として、その処分についての審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ提起することができない
・取消訴訟を提起するために、再審査請求に対する労働保険審査会の裁決まで経る必要はない
・審査官の決定に不服がある者は、再審査請求をすることも、再審査請求をせずに取消訴訟を提起することもできる
<審査官の決定前に取消訴訟を提起できる場合 法40条、行政事件訴訟法8条2項>
・審査請求をした日から3か月を経過しても決定がないとき
・処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき
・その他、審査官の決定を経ないことにつき正当な理由があるとき
<保険給付に関する決定以外の処分>
・保険給付に関する決定以外の処分については、法38条から40条までの労災保険独自の不服申立制度は適用されない
・行政不服審査法に基づく審査請求の対象となる処分については、同法により審査請求を行う
・行政不服審査法による審査請求をすることができる場合であっても、法律に審査請求前置の特別な定めがない限り、審査請求を経ずに直接取消訴訟を提起することができる
【時効・書類の保存・罰則】
<保険給付を受ける権利の時効 法42条1項>
・療養補償等給付たる療養の給付:時効なし
・療養の給付は現物給付であり、請求権の消滅時効の問題が生じないため
・療養補償等給付たる療養の費用、休業補償等給付、葬祭料等、介護補償等給付及び二次健康診断等給付:これらを行使することができる時から2年
・休業補償等給付を受ける権利の時効は、業務上の負傷又は疾病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けない日ごとに、その翌日から進行する
・療養補償等給付たる療養の費用の支給を受ける権利の時効は、療養に要する費用を支払った日の翌日から進行する
・障害補償等給付及び遺族補償等給付:これらを行使することができる時から5年
・障害補償等年金差額一時金及び遺族補償等年金差額一時金:これらを行使することができる時から5年
・傷病補償等年金:時効なし
・傷病補償等年金は、所轄労働基準監督署長の職権により支給決定され、請求行為を必要としないため
<時効の援用及び利益の放棄 法43条>
・保険給付を受ける権利の時効については、援用を必要としない
・保険給付を受ける権利の時効の利益は、放棄することができない
<書類の保存 則51条>
・労災保険に係る保険関係が成立し、又は成立していた事業の事業主、労働保険事務組合及び特別加入団体等は、労災保険に関する書類を、その完結の日から3年間保存しなければならない
<事業主等に対する罰則 法51条>
・事業主、派遣先の事業主又は船員派遣の役務の提供を受ける者が、次のいずれかに該当するときは、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられる
・行政庁の命令による報告若しくは届出をせず、若しくは虚偽の報告若しくは届出をし、又は文書その他の物件を提出せず、若しくは虚偽の記載をした文書を提出したとき
・行政庁の職員による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述せず、若しくは虚偽の陳述をしたとき
<不正受給者からの費用徴収 法12条の3第1項>
・偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、政府は、その保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる
・労災保険法には、不正に保険給付を受けた行為そのものを直接処罰する罰則規定はない
・費用徴収は刑罰ではない
【時効の起算日・進行単位まとめ(労災保険)】
<日ごとに進行する給付>
休業補償等給付など、日ごとに支給される給付については、
療養のため労働することができない日ごとに、
それぞれの翌日から時効が進行する。
<療養の費用の起算日>
療養の費用の支給を受ける権利の時効は、
当該療養の費用を支払った日の翌日から進行する。
<葬祭料の起算日>
葬祭料の支給を受ける権利の時効は、
労働者が死亡した日の翌日から進行する。
<死亡を起算点とする給付>
障害補償一時金、障害補償年金差額一時金など、
受給権者の死亡を契機として請求権が発生する給付については、
受給権者が死亡した日の翌日から時効が進行する。
<二次健康診断等給付の起算日>
二次健康診断等給付の時効は、
一次健康診断の結果を了知し得る日の翌日から進行する。
・療養補償等給付たる療養の費用、休業補償等給付、葬祭料等、介護補償等給付及び二次健康診断等給付:これらを行使することができる時から2年
この記事では不服申立て・時効・罰則まとめについてご紹介しました。
次回に続きます!
