■労災保険法(社会復帰促進等事業)
更新日:8月18日
ここでは社会復帰促進等事業についてお伝えします。
【社会復帰促進等事業】
<目的>
・労働者の社会復帰・介護・遺族支援、事業主による安全衛生確保を促進するための事業
<社会復帰促進等事業の区分 法29条1項>
・社会復帰促進等事業は、次の3つに大別される
①社会復帰促進事業
②被災労働者等援護事業
③安全衛生確保等事業
<社会復帰促進事業 法29条1項>
・被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業
・被災労働者の再就職支援、職業訓練、社会復帰支援
・療養に関する施設(労災病院など)の設置および運営も含まれる
・社会復帰促進の一環として、治療や手術、リハビリ支援を行う役割
<被災労働者等援護事業 法29条1項>
・被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業
・被災労働者・遺族への相談支援、補装具の支給
・介護に関する支援
<労災就労保育援護費(労災保険法29条1項2号、労災保険法施行規則34条1項・2項)>
・傷病(補償)年金、障害(補償)年金又は遺族(補償)年金の受給権者等で、就労のため要保育児を保育施設等に預けている者のうち、所定の要件を満たす者に支給される。
・要保育児1人につき月額9,000円
<労災就学援護費(労災保険法29条1項2号、令和5年3月31日基発0331第47号)>
・被災労働者又はその遺族のうち、学資等の支弁が困難であると認められる者に対し、その者又はその者と生計を同じくする子等の就学を援護するために支給される。
・支給額は、在学者等1人につき次のとおり。
・小学校、特別支援学校の小学部等:月額16,000円
・中学校、特別支援学校の中学部等:月額21,000円(通信制課程:月額18,000円)
・高等学校、特別支援学校の高等部等:月額20,000円(通信制課程:月額17,000円)
・大学等:月額39,000円(通信制課程:月額30,000円)
<長期家族介護者援護金(労災保険法29条1項2号、労災保険法施行規則36条)>
・障害等級第1級若しくは第2級の障害補償年金、複数事業労働者障害年金若しくは障害年金又は傷病等級第1級若しくは第2級の傷病補償年金、複数事業労働者傷病年金若しくは傷病年金を受けていた期間が10年以上である者の遺族のうち、支援が必要な者として厚生労働省労働基準局長が定める要件を満たす者に支給される。
・支給額は100万円である。
・支給を受けることができる遺族が2人以上いる場合は、100万円をその人数で除して得た額が、それぞれの遺族に支給される。
<安全衛生確保等事業 法29条1項>
・労働者の安全及び衛生の確保
・保険給付の適切な実施の確保
・賃金の支払の確保を図るために必要な事業
・事業主による安全衛生の確保、労働災害防止の指導
・未払賃金の立替払事務(一定の範囲で)
<独立行政法人労働者健康安全機構が行う事業(法29条3項)>
・政府は、社会復帰促進等事業のうち、独立行政法人労働者健康安全機構法に掲げるものを独立行政法人労働者健康安全機構に行わせる
・代表例:未払賃金の立替払事業
【特別支給金】
<概要(労災保険法29条1項、特別支給金支給規則2条~5条の2・7条~11条・附則6項)>
特別支給金は「保険給付とは別枠」で支給される金銭で、性質は慰謝料に近い。
そのため保険給付と異なり課税対象にならない。
特別支給金は、すべての保険給付に対応して支給されるものではない。
二次健康診断等給付、療養(補償)等給付、介護(補償)等給付及び葬祭料等(葬祭給付)に対応する特別支給金はない。
支給額の決め方は次の二つに分類される。
・あらかじめ額が定められているもの
・保険給付(年金・一時金)の額を基礎として算定するもの
<事務取扱(労災保険法施行規則1条3項)>
特別支給金に関する事務は、所轄労働基準監督署長が行う。
<休業特別支給金の申請手続(特別支給金支給規則12条)>
休業特別支給金を受けようとする者は、申請の際に次の書類を所轄労働基準監督署長へ提出する。
・当該休業特別支給金の特別給与の総額を記載した届書
・事業主の証明を受けたもの
・特別給与の総額の届出は、最初の休業特別支給金の申請の際に行えば、以後は行わなくてもよい。
・この届出を行った者又はその遺族が、特別給与を算定基礎とする特別支給金の申請を行う場合は、申請書の記載事項のうち、特別給与の総額については記載する必要がないものとして取り扱われる。
<算定基礎年額(特別支給金支給規則6条)>
・年金形式の特別支給金の額の算定に用いる。
・原則として、負傷又は発病の日以前1年間(雇入後1年に満たない者は雇入後の期間)に支払われた特別給与の総額とする。
・ただし、次のいずれか低い額を超える場合は、その低い額を算定基礎年額とする。
①給付基礎日額×365×20%相当額
②150万円
・複数事業労働者は、各事業ごとに算定した算定基礎年額を合算して算定する。
<支給申請の期限(特別支給金支給規則3条6項、4条8項等)>
・休業特別支給金は、支給対象となる日の翌日から起算して2年以内に申請しなければならない。
・休業特別支給金以外の特別支給金は、原則として、支給原因が生じた日の翌日から起算して5年以内に申請しなければならない。
・障害特別支給金は、障害に係る負傷又は疾病が治った日の翌日から起算して5年以内に申請しなければならない。
【休業特別支給金(定率)】
<休業特別支給金(労災保険法14条1項、特別支給金支給規則3条1項)>
休業(補償)等給付を受ける日に対して、次の額が支給される。
・休業(補償)等給付:1日につき休業給付基礎日額の100分の60
・休業特別支給金:1日につき休業給付基礎日額の100分の20
休業特別支給金は、休業(補償)等給付の額の20%ではなく、休業給付基礎日額の20%相当額である。
休業特別支給金は、療養のため労働することができず賃金を受けない日の第4日目から、その申請に基づいて支給される。
療養のため所定労働時間の一部分についてのみ労働した日又は賃金が支払われる休暇の日に係る休業特別支給金の額は、休業給付基礎日額からその日に支払われる賃金の額を控除した額の100分の20に相当する額である。
年齢階層別の最高限度額が休業給付基礎日額とされる場合は、最高限度額を適用しないものとして算定した休業給付基礎日額から賃金を控除し、その控除後の額が最高限度額を超えるときは、最高限度額の100分の20に相当する額とする。
<支給申請の期限(特別支給金支給規則3条6項)>
休業特別支給金の支給の申請は、支給の対象となる日の翌日から起算して2年以内に行わなければならない。
【傷病特別支給金・傷病特別年金】
<傷病特別支給金(一時金)(特別支給金支給規則5条の2、別表第1の2)>
業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による負傷・疾病について、療養開始後1年6か月を経過した日又はその日後に、次のいずれにも該当する労働者に対し、申請に基づいて支給される。
・負傷又は疾病が治っていないこと
・障害の程度が傷病等級に該当すること
傷病特別支給金は、傷病等級に応じた定額の一時金として支給される。
・第1級:114万円
・第2級:107万円
・第3級:100万円
<傷病特別年金(特別支給金支給規則11条、別表第2)>
傷病(補償)年金、複数事業労働者傷病年金又は傷病年金の受給権者に対し、申請に基づいて支給される。
傷病特別年金の額は、算定基礎日額に傷病等級ごとの所定日数を乗じて算定する。
・第1級:算定基礎日額の313日分
・第2級:算定基礎日額の277日分
・第3級:算定基礎日額の245日分
【障害に関する特別支給金】
<障害特別支給金(特別支給金支給規則4条・別表第1)>
障害(補償)等給付の受給権者に対し、申請に基づいて、障害等級に応じた定額の一時金として支給される。
・第1級:342万円
・第2級:320万円
・第3級:300万円
・第4級:264万円
・第5級:225万円
・第6級:192万円
・第7級:159万円
・第8級:65万円
・第9級:50万円
・第10級:39万円
・第11級:29万円
・第12級:20万円
・第13級:14万円
・第14級:8万円
<障害特別年金(特別支給金支給規則7条・別表第2)>
障害(補償)年金、複数事業労働者障害年金又は障害年金の受給権者に対し、申請に基づいて支給される。
障害特別年金の額は、算定基礎日額に障害等級ごとの所定日数を乗じて算定する。
・第1級:313日分
・第2級:277日分
・第3級:245日分
・第4級:213日分
・第5級:184日分
・第6級:156日分
・第7級:131日分
<障害特別一時金(特別支給金支給規則8条・別表第3)>
障害(補償)一時金、複数事業労働者障害一時金又は障害一時金の受給権者に対し、申請に基づいて支給される。
障害特別一時金の額は、算定基礎日額に障害等級ごとの所定日数を乗じて算定する。
・第8級:503日分
・第9級:391日分
・第10級:302日分
・第11級:223日分
・第12級:156日分
・第13級:101日分
・第14級:56日分
<傷病特別支給金との調整(特別支給金支給規則4条3項)>
同一の傷病について傷病特別支給金を受けた者が、その後、障害特別支給金を受けることとなった場合は、障害等級に応じた障害特別支給金の額が、既に支給された傷病特別支給金の額を超えるときに限り、その差額に相当する額が支給される。
<障害特別年金差額一時金(特別支給金支給規則附則6項)>
障害(補償)年金差額一時金、複数事業労働者障害年金差額一時金又は障害年金差額一時金の受給権者に対し、申請に基づいて支給される。
障害特別年金の受給権者が死亡した場合に、障害等級に応じた一定額から、その障害について既に支給された障害特別年金の合計額を差し引いた額が、一時金として遺族に支給される。
<加重障害の場合の取扱い(特別支給金支給規則4条2項・7条2項・8条2項)>
既に身体障害がある者が、新たな業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害によって同一部位の障害の程度を加重した場合は、現在の障害等級に応じた額から、既にあった障害等級に応じた額を差し引いた加重分が支給される。
【遺族に関する特別支給金】
<遺族特別支給金(特別支給金支給規則5条)>
業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により労働者が死亡した場合に、遺族(補償)等給付の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される定額の一時金である。
支給額は300万円である。
遺族特別支給金を受けることができる遺族が2人以上いる場合は、300万円をその人数で除して得た額が、それぞれの遺族に支給される。
<遺族特別年金(特別支給金支給規則9条・別表第2)>
遺族(補償)年金、複数事業労働者遺族年金又は遺族年金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される。
遺族特別年金の額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている遺族(補償)等年金を受けることができる遺族の人数に応じて、算定基礎日額に次の所定日数を乗じて算定する。
・1人:153日分
・1人で、55歳以上の妻又は一定の障害の状態にある妻:175日分
・2人:201日分
・3人:223日分
・4人以上:245日分
<遺族特別一時金(特別支給金支給規則10条・別表第3)>
遺族(補償)一時金、複数事業労働者遺族一時金又は遺族一時金の受給権者に対し、その申請に基づいて支給される。
労働者の死亡当時、遺族(補償)等年金を受けることができる遺族がいない場合は、算定基礎日額の1,000日分が支給される。
遺族(補償)等年金の受給権者がすべて失権し、他に遺族(補償)等年金を受けることができる遺族がいない場合で、既に支給された遺族特別年金の合計額が算定基礎日額の1,000日分に満たないときは、その差額が支給される。
【特別支給金の通則事項】
<給付調整>
特別支給金は保険給付との併給調整を行わない。
<費用徴収>
特別支給金は、事業主からの費用徴収の対象とならない。
<譲渡・差押等>
特別支給金は、保険給付のような譲渡・担保・差押禁止規定(法12条2項)の適用を受けない。
したがって、差押え・譲渡が禁止されていない。
<不服申立て>
特別支給金は不服申立ての対象外(法38条1項の対象外)。
<海外派遣者等>
特別給与を算定基礎とする支給金の規定は、派遣労働者等には適用されない場合がある。
<スライド制の適用除外>
特別支給金は年金給付ではないため、物価スライド・賃金スライド等の改定の対象とならない。
【社会復帰促進等事業と特別支給金の事務】
<社会復帰促進等事業の実施主体>
社会復帰促進等事業のうち、政府はその一部を
独立行政法人 労働者健康安全機構に行わせることができる。
<特別支給金の支給事務>
特別支給金の支給に関する事務は、都道府県労働局長の指揮監督を受けて、
所轄労働基準監督署長が行う。
この記事では社会復帰促進等事業についてご紹介しました。
次回に続きます!
