全国健康保険協会
- 筒井

- 7月24日
- 読了時間: 6分
更新日:8月5日
ここでは全国健康保険協会についてお伝えします。
●全国健康保険協会(協会けんぽ)
<設立の背景>
・平成20年に、旧「政府管掌健康保険制度」が廃止され、その運営を引き継ぐかたちで「全国健康保険協会」が設立された(略称:協会けんぽ)
<法律上の位置づけ>
・健康保険法に基づく「公法人」
・厚生労働大臣の認可を受けて設立される
・全国単位で運営されるが、地域ごとの「支部(都道府県支部)」がある
<加入対象者>
・中小企業などの会社に勤務する被保険者とその被扶養者
・大企業は健康保険組合(組合健保)を持っていることが多いため、主に中小企業をカバーしている
<主な業務>
・健康保険の保険者として、保険料の徴収・保険給付の支給を行う
・保険証の発行や資格の管理
・保険料率の設定(都道府県支部ごとに異なる保険料率が設定されている)
・高齢者医療制度への拠出(後期高齢者支援金など)
<運営と監督>
・厚生労働大臣の監督を受ける(業務計画や決算の承認など)
・全国に1つの本部+各都道府県支部(保険者機能は本部にある)
・協会は、決算報告書等について「監事の監査」および「会計監査人の監査」を受けなければならない
・決算報告書には、「財務諸表」と「事業報告書」を添付し、厚生労働大臣に提出する必要がある
<役員構成と任期>
・協会には、次の役員が置かれる:
▶ 理事長 1人
▶ 理事 6人
▶ 監事 2人
・役員の任期は、いずれも3年
<理事に欠員が生じた場合>
・理事に欠員が生じたときは、理事のうちから、あらかじめ理事長が指定する者が、その業務を代理して行うことができる。
<財政のしくみ>
・国庫補助はなく、保険料と拠出金で運営されている
・協会けんぽは、高齢者医療制度に対して支援金や納付金を拠出する立場(=お金出す側)
<注意ポイント>
・協会けんぽは公法人=「公的機関」だが、国の行政機関ではない
・都道府県支部は保険者ではない(→ 本部が保険者)
・保険料率が支部ごとに異なるのは、加入者の医療費実績等によって決まる
<関連知識>
・協会けんぽと並ぶ健康保険の保険者には、「健康保険組合(=大企業など)」「共済組合(公務員等)」がある
<厚生労働大臣が行う業務>
業務内容 | 誰が行う?(協会けんぽ管掌事業所の場合) |
被保険者の資格取得・喪失 | ✅ 厚生労働大臣 |
標準報酬月額の決定 | ✅ 厚生労働大臣 |
保険料の徴収 | ✅ 厚生労働大臣 |
保険証の発行 | ✅ 厚生労働大臣(実務は協会が代行) |
保険給付(傷病手当金など) | ❌ これは協会けんぽが行う! |
【協会けんぽの定款変更】
<原則>
協会けんぽ(全国健康保険協会)の定款を変更するには、
厚生労働大臣の「認可」を受けなければならない。
<例:認可が必要な変更>
・事業の目的
・組織の構成
・保険料の徴収方法に関すること など
→ 重要な事項の変更はすべて「認可制」
<例外:認可が不要な変更>
・主たる事務所の所在地の変更
→ この場合は「認可は不要」だが、「遅滞なく届出」が必要となる。
<効力発生日>
所在地など軽微な変更については、「届け出前でも変更の効力は生じる」
(=大臣の認可を待たずに有効となる)
<メモ>
・原則は「認可制」、例外は「届出制」
・特に“住所変更は認可不要”という例外がよく問われる
・“遅滞なく届け出”がキーワード!タイムラグを許さない形式になっている
【協会けんぽ|役員報酬・退職手当ルールまとめ】
<対象>
全国健康保険協会(協会けんぽ)の役員(理事長・理事・監事など)
<ルール①:業績考慮の必要性>
・報酬および退職手当の支給基準には、協会の「業績が考慮されること」が必要
・定額一律ではなく、業績との連動が前提
<ルール②:手続きの流れ>
① 支給基準を策定(業績反映ルールを定める)
② 厚生労働大臣に届け出る(届出義務あり)
③ 支給基準を公表する(公表義務あり)
<ポイント>
・「業績考慮」「届出」「公表」の3点セットをおさえる!
・健康保険組合にはこのルールはない=比較問題に注意
・「報酬だけ受け取る」はNG!業績に応じた設計が必須
【全国健康保険協会の役員・理事長の解任】
<根拠条文>
・健康保険法 第7条の14(役員の解任)
・健康保険法 第158条(全国健康保険協会の監督)
<解任できる権限者>
・厚生労働大臣
・全国健康保険協会理事長
(それぞれ、自らが任命した役員に対して)
<第7条の14に基づく解任>
・次のいずれかに該当すると認められるときは、役員を解任できる
・心身の故障により職務の遂行に堪えないとき
・職務上の義務違反があるとき
・その他、役員として不適当と認められるとき
・全国健康保険協会理事長を解任したときは、遅滞なく厚生労働大臣に届け出て、公表しなければならない
<第158条に基づく解任命令>
・厚生労働大臣は、全国健康保険協会に対し期間を定めて指導・監督を行える
・協会が指導に違反した場合、または業務運営が著しく不適当な場合、
→ 厚生労働大臣は「役員の全部または一部の解任を命ずることができる」
・この「役員」には理事長も含まれるため、理事長に対しても解任命令が可能
<ポイント>
・理事長は役員の一部として、どちらの規定でも解任対象に含まれる
・第158条の「命ずることができる」は、協会の自主的判断による辞任ではなく、大臣による強制的な命令である
【全国健康保険協会の役員に対する守秘義務と罰則】
<根拠規定>
・健康保険法の規定に基づく
<対象者>
・全国健康保険協会の役員または職員
<義務内容>
・職務上知り得た秘密を守る義務がある
<罰則>
・守秘義務に違反して秘密を漏らした場合、
→ 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
【都道府県単位保険料率の変更手続】
<対象>
・全国健康保険協会(協会けんぽ)
<手続の流れ>
・協会が「都道府県単位保険料率」を変更しようとするときは、以下の手続きを踏まなければならない。
<手順>
・まず、協会の理事長が当該変更に関して、
・都道府県に所在する協会支部の支部長の意見を聴き、
・その上で運営委員会の議を経る必要がある。
・その議を経た後、協会の理事長は、その変更について「厚生労働大臣の認可」を受けなければならない。
<健康保険組合の決算報告義務>
・健康保険組合は、毎年度終了後6か月以内に、以下の対応をしなければならない。
<作成・提出義務>
・厚生労働省令で定めるところにより、事業及び決算に関する報告書を作成する。
・この報告書は、厚生労働大臣に提出しなければならない。
<備付け義務>
・当該報告書は、健康保険組合の主たる事務所に備え付けておく必要がある。
→ 提出&備付けの両方が必要な点に注意!
この記事では全国健康保険協会についてご紹介しました。
次回に続きます!


