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出産したときの健康保険給付

  • 執筆者の写真: 筒井
    筒井
  • 2024年8月23日
  • 読了時間: 6分

更新日:8月5日

ここでは出産したときの健康保険給付についてお伝えします。



健康保険に加入しており、出産した場合

被保険者とその被扶養者についても様々な保険給付を受けることができます。



●出産育児一時金

被保険者が産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合

一時金として50万円支給されます。

※妊娠4ヶ月以上であれば死産・流産・早産でも支給される



【出産育児一時金(双子の場合)まとめ】


<支給額(1児あたり)>

・令和5年4月1日以降、出産育児一時金および家族出産育児一時金の額は、

 産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合、

 「1児あたり50万円」とされている。


<支給額の内訳>

・本体額:48万8千円

・加算額:3万円(補償制度分)+ 1万2千円(保険者が定める額)

・合計:50万円


<双子(2児)の場合>

・出産育児一時金は「1児ごとに支給」される。

・したがって、双子を出産した場合は:


 50万円 × 2児 = 合計100万円


<結論>

・双子の出産時には、出産育児一時金として「合計100万円」が支給される。


●出産日一時貸付金制度(出産日貸付制度)


<制度の目的>

・被保険者が出産する際、「出産育児一時金」が支給される前に、

 病院などに支払う出産費用を一時的に立て替えられるようにする協会けんぽ独自制度


・制度を活用することで、実際に給付金が支給されるまでの金銭的負担を軽減できる。


<対象者>

・健康保険の被保険者または被扶養者で、

 出産育児一時金の支給対象となる人


<貸付額>

原則として「出産育児一時金」の支給見込額の8割相当


<返済方法>

後日、出産育児一時金が支給されたときに自動的に相殺(天引き)される  

 → 差額(残額)があれば、それが本人に支給される形


<申請のタイミング>

・出産予定日前に、事前に健康保険協会や組合に申請しておく必要がある


<注意点>

・実施していない健康保険組合もある(制度の有無は保険者によって異なる)

・多くの場合、貸付制度を利用しなくても、「直接支払制度(医療機関への直接払い)」で対応できる場合もある



●家族出産育児一時金

被保険者の扶養家族が産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合

被保険者に一時金として50万円支給されます。

※妊娠4ヶ月以上であれば死産・流産・早産でも支給される



●出産手当金


<支給対象>

被保険者が出産のために休業し、事業主から報酬を受けていない場合に支給。


<支給期間>

●単胎妊娠の場合

 → 出産日(予定日)の 42日前(産前休業)から

   出産の翌日以降 56日目まで(産後休業)


多胎妊娠の場合

 → 出産日(予定日)の 98日前(産前休業)から

   出産の翌日以降 56日目まで(産後休業)


※出産が予定日より遅れた場合、遅れた日数分だけ産前期間は延びる。


<継続給付(資格喪失後の支給)>

被保険者期間が 継続して1年以上 ある場合、資格喪失後も法定支給期間内であれば引き続き出産手当金の支給を受けられる。


<参考:傷病手当金との比較>

傷病手当金の継続給付も同様に、1年以上被保険者であれば資格喪失後も 最長1年6ヵ月 支給される。



【産前産後休業終了時改定のルール】


<改定の内容>

産前産後休業終了日の翌日から起算して2か月を経過した日の属する月の翌月から、標準報酬月額が改定される。


<固定期間のルール>

改定が行われた月が7月〜12月のいずれかである場合、改定によって決定された標準報酬月額は、翌年8月まで固定される。


<再改定の制限>

固定期間中は、随時改定・育児休業終了時改定・再度の産前産後休業終了時改定など、いかなる理由であっても標準報酬月額の改定は行われない。



【育児休業中の保険料免除の条件(14日ルール)】


<基本ルール>

育児休業を取得した月は、その月の育児休業日数が14日以上であれば保険料が免除される。14日未満の場合は免除の対象とならない。


<具体例>

育児休業の開始日:令和5年1月4日

育児休業の終了日:令和5年1月16日

この場合、休業日数は13日なので、1月は保険料免除の対象外となる。


<ポイント>

・月内に14日以上の育児休業があれば免除対象になる

・出勤日があっても問題ない(例:末日のみ出勤など)


<法令根拠>

健康保険法 第159条第1項第2号

健康保険施行規則 第135条第4項



【育児休業等終了時改定における標準報酬月額の改定ルール】


<改定の内容>

育児休業等終了時改定により、標準報酬月額は「育児休業等終了日の翌日から起算して2か月を経過した日の属する月の翌月」から改定される。


<改定の対象期間>

改定の基礎となるのは、育児休業終了日の翌日から起算した2か月間の報酬。


<理由>

育児休業後は時短勤務などにより報酬が大きく変動するケースがあるため、復帰後の実態に即した報酬に改定する必要がある。


<他の改定との関係>

この改定は「随時改定(月変)」とは異なり、被保険者が申し出なくても自動的に行われる。随時改定と重複しても、育児休業等終了時改定が優先される。


<届出の提出先>

届出は速やかに、事業主を経由して日本年金機構または健康保険組合に提出する。



【産前産後休業と育児休業が重複する場合の保険料免除の取り扱い】


<基本ルール>

・育児休業と産前産後休業が重複する場合

 → 保険料免除は「産前産後休業中」が優先される


<取り扱い>

・育児休業から引き続いて産前産後休業を取得した場合

 → 「産前産後休業を開始した日の前日」が育児休業等の終了日とみなされる


<届け出の要否>

・この場合、「育児休業等の終了届」は不要



【出産手当金と傷病手当金が重複した場合の取扱い】


<ルール>

・同一期間に「出産手当金」と「傷病手当金」の両方の支給要件を満たす場合

 → 出産手当金が優先される


<理由>

・健康保険法第103条第1項により、出産手当金の支給があるときは、同一期間については傷病手当金は支給されない


<ポイント>

・「同一の疾病等に基づく」かどうかは関係ない

・どちらが先に発生したかにも関係なく、出産手当金が常に優先


<ひっかけ注意!>

・「どちらか一方を選べる」などの記述は誤り

・出産手当金の方が金額が高いことが多く、制度的にも優先されている



【資格喪失後の出産手当金の支給要件】


<基本ルール>

・出産手当金は、出産日または出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)に達した日から受給権が発生する。


<資格喪失後でも出産手当金を受け取れる条件>

・出産日または出産予定日の42日(多胎妊娠は98日)前の日が「資格喪失日の前日以前」であることが必要。

・資格喪失の際、「現に出産手当金を受けている」または「受け得る状態」であることも必要。


<注意点>

・設問で、資格喪失日から6か月以上後に出産するケースなどは、上記要件を満たさず支給されない。



この記事では出産したときの健康保険給付についてご紹介しました。

次回に続きます!








 


 
 

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