労働契約における禁止事項と任意貯蓄制度
- 筒井

- 2024年10月31日
- 読了時間: 4分
更新日:2025年10月18日
ここでは労働契約における禁止事項と任意貯蓄制度についてお伝えします。
【労働契約の禁止事項(労働基準法第16条〜第18条の2)】
ここでは、労働契約において禁止されている主な取り決めについてまとめます。
<賠償予定の禁止(労基法第16条)>
・労働契約の不履行について、あらかじめ罰金・違約金や損害賠償額を定めることは禁止。
・実際に損害が発生した場合に、事後的に損害賠償を請求することは可能。
・目的:労働者の自由な就労を妨げる過度な経済的拘束を防ぐため。
<前借金相殺の禁止(労基法第17条)>
・労働を条件として前貸しした金銭(前借金)を、賃金から差し引くことは禁止。
・ただし、労働者が自ら希望して相殺する場合は差し支えない。
・労働を条件としない一般的な貸付金は「前借金」に該当しない。
・目的:借金による身分的拘束を防止するため。
<強制貯蓄の禁止(労基法第18条)>
・労働契約に付随して、会社が労働者に貯蓄契約を強制したり、貯蓄金を管理することは禁止。
・ただし、労働者が任意で行う貯蓄は「一定の法定措置」をとれば認められる。
・その場合、厚生労働省の定めにより年5厘(0.5%)以上の利子をつけることが必要。
・目的:貯蓄を口実にした賃金の拘束を防止するため。
<中途契約解除制限の禁止(労基法第18条の2)>
・労働者の意思に反して、一定期間内に退職できないとする「在職強制契約」は無効。
・労働者はいつでも退職する自由(職業選択の自由)を有する。
・ただし、有期労働契約の場合には、労働契約法第17条による例外(1年経過後の自由退職規定)あり。
≪ポイント≫
・これらの禁止事項はすべて、労働者の「自由・生活・財産の保障」を目的としている。
・違反条項はすべて「無効」となり、労働者に不利な拘束力を持たない。
・実際の損害請求や、労働者自身の意思による相殺・貯蓄は有効。
【任意貯蓄と法定の措置(労働基準法第18条・施行規則第9条)】
<概要>
・「強制貯蓄の禁止」の例外として、労働者が自発的に行う任意貯蓄は、
法定の管理措置を講じれば合法とされる。
・目的:労働者の貯蓄を安全かつ公正に管理するための制度。
<法定の措置>
任意貯蓄を扱う会社は、次の措置を講じなければならない。
1.労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出る。
2.貯蓄金管理規定を作成し、労働者に周知(作業場への備付けなど)する。
3.労働者が返還を請求した場合、遅滞なく返還する。
4.貯蓄金管理規定には、次の事項を定めること。
・預金者の範囲
・1人当たりの預金額の限度
・利率・利子の計算方法
・預金の受入・払い戻しの手続
・預金の保全の方法
5.上記の取扱方法を具体的に規定に明記する。
6.毎年3月31日以前に、前年1年間の管理状況をまとめ、
4月30日までに所轄労働基準監督署長へ報告する。
7.貯蓄金には「年5厘(0.5%)以上の利子」を付すこと。
8.通帳を会社が保管する場合、以下を明記すること。
・金融機関名・預金の種類・通帳保管方法・出入れ取次方法。
≪ポイント≫
・労働者が任意で参加し、会社が安全に管理する制度であれば合法。
・これらの措置を怠ると「実質的な強制貯蓄」とみなされるおそれがある。
・利息・管理・報告・返還のルールを守ることが法的適正の条件。
【貯蓄金管理中止命令(労働基準法施行規則第10条)】
<概要>
・会社が労働者の返還請求に応じない場合など、
任意貯蓄の管理が労働者の利益を著しく害すると認められるときに発動される行政命令。
<内容>
・労働者が返還を求めたにもかかわらず、会社が応じない場合、
所轄労働基準監督署長は、使用者に対し
▶「当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずる」
ことができる。
・命令の対象は必要な範囲に限られ、労働者全員または一部に限定して発出可能。
<目的>
・任意貯蓄制度を悪用した返還拒否や流用などの不正を防止する。
・労働者の財産を守り、信頼できる制度運用を確保する。
≪ポイント≫
・返還請求への迅速な対応が任意貯蓄運用の必須条件。
・返還拒否や遅延があると「管理中止命令」の対象となる。
・この命令は労働者保護のための最終的な行政措置。
この記事では労働契約における禁止事項と任意貯蓄制度についてご紹介しました。
次回に続きます!


