■労働基準法(年次有給休暇)
更新日:8月9日
ここでは年次有給休暇についてお伝えします。
【年次有給休暇(労基法第39条)】
<概要(労基法39条1項・2項)>
使用者は、雇入れの日から6か月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、10労働日の年次有給休暇を与えなければならない。
その後は、継続勤務期間に応じて付与日数が増加し、6年6か月以上で20日となる。
<付与の基本要件(労基法39条1項・2項)>
・雇入れの日から6か月以上継続勤務していること
・算定期間の全労働日の8割以上出勤していること
<全労働日の範囲(労基法39条第1項、平成25年7月10日基発0710第3号)>
全労働日とは、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日をいう。
使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日は、全労働日に含めない。
労働者の責めに帰すべき事由による不就労日は、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものを除き、全労働日に含める。
<年次有給休暇の利用目的(労基法39条第1項・第2項、最判昭和48年3月2日白石営林署事件)>
年次有給休暇は、原則として利用目的を問わず取得することができる。
他の事業場における争議行為に参加する目的で年次有給休暇を取得することも、年次有給休暇権の行使として認められる。
ただし、所属する事業場の業務の正常な運営を阻害する目的で、全員が一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱する一斉休暇闘争は、年次有給休暇に名を借りた同盟罷業であり、年次有給休暇権の行使とは認められない。
<事後の時季変更権(労基法39条第5項、最判昭和57年3月18日電電公社此花電報電話局事件)>
使用者の時季変更権は、原則として労働者が指定した休暇期間の開始前に行使しなければならない。
ただし、労働者の時季指定が休暇期間の始期に極めて接近して行われ、使用者に時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかった場合は、休暇期間の開始後に行使されたことだけを理由として、直ちに不適法とはならない。
客観的に時季変更権を行使できる事由があり、かつ、その行使が遅滞なく行われた場合は、適法な時季変更権の行使として効力が認められる。
<育児休業期間中の年次有給休暇(労基法39条第1項・第2項、平成3年12月20日基発712号)>
年次有給休暇は、労働義務のある日についてのみ請求できる。
育児休業の申出後は、育児休業期間中の日について年次有給休暇を請求する余地はない。
ただし、育児休業の申出前に、育児休業期間中の日について時季指定又は労使協定に基づく計画的付与が行われた場合は、その日に年次有給休暇を取得したものとされ、使用者には賃金支払義務が生じる。
<継続勤務(労基法39条1項、昭和63年3月14日基発150号)>
・「継続勤務」に該当するかは、勤務の実態に即して実質的に判断する。
・会社が解散し、従業員の待遇等を含む権利義務関係が新会社に包括承継された場合など、実質的に労働関係が継続しているときは、勤務年数を通算する。
<年休の権利の発生(労基法39条1項・5項)>
・年次有給休暇の権利は、法定要件を満たした時点で、労働者の請求を待たず法律上当然に発生する。
・労働者は、発生した年休について取得時季を指定する。
<通常の付与対象となる労働者(労基法39条1項・2項、則24条の3第4項)>
次のいずれかに該当する労働者には、通常の付与日数が適用される。
・週の所定労働日数が5日以上
・週の所定労働時間が30時間以上
・週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、年間所定労働日数が217日以上
<通常の付与日数(労基法39条1項・2項)>
継続勤務期間 | 付与日数 |
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月 | 20日(最大) |
【年次有給休暇の比例付与(労基法39条3項)】
<比例付与の対象者(労基法39条3項、則24条の3第1項)>
次の要件を両方満たす労働者が比例付与の対象となる。
・週の所定労働日数が4日以下
・週の所定労働時間が30時間未満
週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、年間所定労働日数が216日以下であり、かつ、週の所定労働時間が30時間未満であることが必要。
<付与要件(労基法39条3項)>
・雇入れの日から6か月以上継続勤務していること
・算定期間の全労働日の8割以上出勤していること
・付与日数は、週又は年間の所定労働日数及び継続勤務期間に応じて決定する。
<週4日又は年間169日から216日の場合(則24条の3第3項)>
6か月:7日
1年6か月:8日
2年6か月:9日
3年6か月:10日
4年6か月:12日
5年6か月:13日
6年6か月以上:15日
<週3日又は年間121日から168日の場合(則24条の3第3項)>
6か月:5日
1年6か月:6日
2年6か月:6日
3年6か月:8日
4年6か月:9日
5年6か月:10日
6年6か月以上:11日
<週2日又は年間73日から120日の場合(則24条の3第3項)>
6か月:3日
1年6か月:4日
2年6か月:4日
3年6か月:5日
4年6か月:6日
5年6か月:6日
6年6か月以上:7日
<週1日又は年間48日から72日の場合(則24条の3第3項)>
6か月:1日
1年6か月:2日
2年6か月:2日
3年6か月:2日
4年6か月:3日
5年6か月:3日
6年6か月以上:3日
<ポイント(労基法39条3項)>
・比例付与の対象となるには、「週4日以下」と「週30時間未満」の両方を満たす必要がある。
・週4日勤務であっても、週の所定労働時間が30時間以上であれば、通常の付与日数が適用される。
・「6か月継続勤務」と「8割以上出勤」の要件は、通常の労働者と同じ。
<週4日以下・年間216日以下(所定労働時間30時間未満)の比例付与日数>
継続勤務期間 | 付与日数 |
6ヶ月 | 7日 |
1年6ヶ月 | 8日 |
2年6ヶ月 | 9日 |
3年6ヶ月 | 10日 |
4年6ヶ月 | 12日 |
5年6ヶ月 | 13日 |
6年6ヶ月 | 15日(最大) |
<週3日以下・年間168日以下の場合の比例付与日数>
継続勤務期間 | 付与日数 |
6ヶ月 | 5日 |
1年6ヶ月 | 6日 |
2年6ヶ月 | 6日 |
3年6ヶ月 | 8日 |
4年6ヶ月 | 9日 |
5年6ヶ月 | 10日 |
6年6ヶ月 | 11日(最大) |
<週2日以下・年間120日以下の場合の比例付与日数>
継続勤務期間 | 付与日数 |
6ヶ月 | 3日 |
1年6ヶ月 | 4日 |
2年6ヶ月 | 4日 |
3年6ヶ月 | 5日 |
4年6ヶ月 | 6日 |
5年6ヶ月 | 6日 |
6年6ヶ月 | 7日(最大) |
<週1日以下・年間72日以下の場合の比例付与日数>
継続勤務期間 | 付与日数 |
6ヶ月 | 1日 |
1年6ヶ月 | 2日 |
2年6ヶ月 | 2日 |
3年6ヶ月 | 2日 |
4年6ヶ月 | 3日 |
5年6ヶ月 | 3日 |
6年6ヶ月 | 3日(最大) |
【年次有給休暇の時季指定・時季変更権(労基法39条5項)】
<労働者の時季指定権(労基法39条5項本文)>
使用者は、年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
労働者が具体的な取得日を指定することを時季指定権という。
<使用者の時季変更権(労基法39条5項ただし書)>
労働者が請求した時季に年休を与えることが、事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は他の時季に年休を与えることができる。
単に業務が忙しい、人員が不足しているというだけで当然に時季変更権を行使できるものではなく、事業の規模、業務内容、労働者の配置及び代替要員確保の可能性等を踏まえて判断する。
<年休請求に対する取扱い(労基法39条5項)>
・使用者は、原則として労働者が指定した時季に年休を与えなければならない。
・使用者は、年休の取得そのものを拒否することはできない。
・時季変更権を行使した場合も、年休の権利自体は消滅せず、他の時季に取得させなければならない。
【年5日の年次有給休暇の確実な取得(労基法39条7項・8項)】
<使用者による時季指定義務(労基法39条7項)>
使用者は、基準日に10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、基準日から1年以内に、年休日数のうち5日について取得時季を指定して与えなければならない。
<労働者の意見聴取(則24条の6)>
使用者が取得時季を指定するときは、あらかじめ労働者の意見を聴かなければならない。
使用者は、労働者の意見を尊重するよう努めなければならない。
<時季指定義務から控除される日数(労基法39条8項)>
次の日数は、使用者が時季を指定すべき5日から控除される。
・労働者が自ら時季を指定して取得した日数
・労使協定による計画的付与により取得した日数
<使用者が指定した時季の変更(労基法39条7項)>
使用者が年5日の取得義務を履行するために指定した年休について、使用者が時季変更権を行使することは想定されない。
<前倒し付与(労基法39条7項、則24条の5)>
法定の基準日より前に10日以上の年休を付与した場合は、その付与日から1年以内に5日を取得させる義務が生じる。
基準日を統一するため、法定の基準日より前に年休を付与した場合は、一定の方法により履行期間を調整することができる。
【時間単位年休(労基法39条4項)】
<制度の概要(労基法39条4項)>
使用者は、労使協定を締結した場合、年5日の範囲内で、時間を単位として年次有給休暇を与えることができる。
<労使協定の記載事項(則24条の4)>
労使協定には、次の事項を定めなければならない。
①時間単位年休を与えることができる労働者の範囲
②時間単位年休の日数
③時間単位年休1日分の時間数
④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
<取得単位(労基法39条4項、則24条の4)>
・取得単位は、1時間又は2時間、3時間などの整数時間とする。
・1時間未満の単位で与えることはできない。
・1時間以外の時間を単位とする場合、その時間数は1日の所定労働時間数未満でなければならない。
<1日分の時間数(則24条の4)>
時間単位年休1日分の時間数は、労働者の1日の所定労働時間数を基礎として定める。
1日の所定労働時間数に1時間未満の端数がある場合は、時間単位に切り上げる。
<年5日取得義務との関係(労基法39条7項)>
時間単位で取得した年休は、使用者に義務付けられた年5日の取得日数には算入されない。
<労使協定の届出(労基法39条4項)>
時間単位年休に関する労使協定は、所轄労働基準監督署長への届出を要しない。
【計画的付与・半日単位年休(労基法39条6項)】
<計画的付与(労基法39条6項)>
使用者は、労使協定により、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、取得時季をあらかじめ定めることができる。
少なくとも5日については、労働者が自由に時季を指定できるよう残さなければならない。
<計画的付与の方法(労基法39条6項)>
計画的付与には、事業場全体の一斉付与、班・グループ別の交替制付与、個人別付与などがある。
<時間単位年休の計画的付与(労基法39条4項・6項、平成21年5月29日基発0529001号)> 計画的付与として時間単位年休を与えることはできない。 時間単位年休は、労働者が時間単位での取得を請求した場合に与えるものである。
<半日単位年休(労基法39条)>
労働者が半日単位での取得を希望し、使用者が同意した場合は、半日単位で年休を与えることができる。
半日単位年休の導入には、労使協定を要しない。
【年次有給休暇のその他のルール】
<年休中の賃金(労基法39条9項)>
年休中の賃金は、次のいずれかの方法により支払う。
①平均賃金
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
③健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額
③の方法を採用する場合は、労使協定が必要。
<不利益取扱いの禁止(労基法附則136条)>
使用者は、労働者が年次有給休暇を取得したことを理由として、賃金の減額その他の不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
<年次有給休暇管理簿(則24条の7)>
使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、次の事項を記載しなければならない。
・年休を取得した時季
・取得した日数
・基準日
年次有給休暇管理簿は、原則として当該期間満了後5年間保存する。ただし、当分の間は3年間とされる。
<消滅時効(労基法115条)>
年次有給休暇の請求権は、付与日から2年間行使しない場合、時効により消滅する。
<生理休暇との関係(労基法68条)>
生理日の就業が著しく困難な女性が請求した生理休暇は、年次有給休暇とは別の休暇であり、年休を取得したものとは扱われない。
この記事では年次有給休暇についてご紹介しました。
次回に続きます!
