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■労災保険法(業務上疾病認定基準・評価期間)

2025年11月20日
読了時間: 8分

更新日:8月9日

ここでは業務上疾病認定基準についてお伝えします。


【脳・心臓疾患の業務上外認定 労基則35条・別表第1の2第8号】

<根拠 労基則35条・別表第1の2第8号>

・令和3年9月14日付基発0914第1号「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」

・令和5年10月18日付基発1018第1号により改正


<基本的な考え方 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・脳・心臓疾患は、その発症の基礎となる動脈硬化等による血管病変、動脈瘤、心筋変性等の基礎的病態が、長い年月の生活の営みの中で徐々に形成、進行及び増悪するという自然経過をたどって発症する。

・業務による明らかな過重負荷が加わることによって、血管病変等が自然経過を超えて著しく増悪し、脳・心臓疾患を発症した場合は、業務が相対的に有力な原因であるとして、業務に起因する疾病として取り扱う。

・業務による過重負荷の判断では、労働時間の長さ等で表される業務量、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する。


<認定要件 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

次のいずれかの業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務に起因する疾病として取り扱う。

①発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。

②発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと。

③発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。


<評価期間 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・長期間の過重業務:発症前おおむね6か月間

・短期間の過重業務:発症前おおむね1週間

・異常な出来事:発症直前から前日まで

・発症前おおむね6か月より前の業務についても、疲労の蓄積に係る業務の過重性を評価する際の付加的要因として考慮する。


<日常業務の範囲 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・日常業務とは、「通常の所定労働時間内の所定業務内容」をいう。

・特に過重な業務とは、日常業務に比較して、特に過重な身体的又は精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務をいう。

・日常業務に就労する上で受ける負荷の影響は、血管病変等の自然経過の範囲にとどまるものとされる。


<長期間の過重業務 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・長期間の過重業務は、発症前おおむね6か月間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断する。

・業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても特に過重な身体的又は精神的負荷と認められる業務であるかを、客観的かつ総合的に判断する。

・同種労働者には、職種、職場における立場や職責、年齢、経験等が類似し、基礎疾患を有していても日常業務を支障なく遂行できる者を含む。


<勤務間インターバル 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号・基発1018第1号>

・勤務間インターバルとは、終業から次の始業までの時間をいう。

・長期間の過重業務の判断では、睡眠時間を確保する観点から、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無、時間数、頻度及び連続性等を検討し、評価する。

・勤務間インターバルがおおむね11時間未満であることだけをもって、直ちに過重業務と判断するものではない。

・勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務が多いほど、睡眠時間の確保に支障を来しやすく、業務と発症との関連性を評価する上で負荷要因となる。


<短期間の過重業務 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・短期間の過重業務は、発症前おおむね1週間の業務を評価する。

・発症前おおむね1週間より前の業務についても、発症に近接した時期の業務との関連性が認められる場合は、必要に応じて評価する。

・業務量、業務内容、作業環境等を考慮し、日常業務に比較して特に過重な身体的又は精神的負荷があったかを総合的に判断する。


<異常な出来事 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号>

・異常な出来事は、発症直前から前日までの間に遭遇した出来事を評価する。

・異常な出来事とは、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る出来事をいう。

・極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす事態、急激で著しい身体的負荷を強いられる事態、急激で著しい作業環境の変化等が該当する。

・異常な出来事による急激な血圧変動、血管収縮、強度の精神的又は身体的負荷等によって発症する場合は、通常、負荷を受けてから24時間以内に症状が出現すると考えられる。


<器質的心疾患を有する場合 労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号・基発1018第1号>

・器質的心疾患を有する者についても、その病態が安定しており、直ちに重篤な状態に至るとは考えられない場合は、業務による過重負荷と発症又は増悪との関連を判断する。

・業務による明らかな過重負荷によって、基礎疾患が自然経過を超えて著しく増悪し、重篤な状態に至ったと認められる場合は、業務起因性が認められる。

・基礎疾患を有していることだけを理由として、業務起因性が否定されるものではない。


<複数事業労働者の負荷の総合評価 労災保険法7条1項2号・労基則別表第1の2第8号・基発0914第1号・基発1018第1号>

・複数事業労働者について、一の事業における業務上の負荷だけでは業務災害に該当しない場合は、複数の事業における業務上の負荷を総合的に評価し、複数業務要因災害に該当するかを判断する。

・労働時間については、異なる事業における労働時間を通算して評価する。

・労働時間以外の負荷要因についても、異なる事業における負荷を合わせて総合的に評価する。

・ただし、異常な出来事は、その性質上、一の事業における業務災害に該当するかを判断するものであり、一般的には異なる事業における負荷を合わせて評価しない。



【心理的負荷による精神障害の認定基準(労基則・別表第1の2)】

<根拠>

・令和5年9月1日付 基発0901第2号

・対象疾病は、労働基準法施行規則 別表第1の2 第9号に規定する

 精神および行動の障害(Fコード)など。


<認定の3要件>

次の①②③のいずれの要件も満たす必要がある。

① 対象疾病を発症していること。

② 発症前おおむね6か月間に、業務による強い心理的負荷が認められること。

 (6か月=評価期間の目安)

③ 業務以外の心理的負荷や個体側要因のみで発症したとは認められないこと。

 (業務起因性の確保)


<心理的負荷の強度>

業務による心理的負荷は、業務による心理的負荷評価表を指標として、「強」「中」「弱」の3段階で評価する。

「強」は業務による強い心理的負荷が認められるもの、「中」は「弱」よりは心理的負荷があるものの強い心理的負荷とは認められないもの、「弱」は日常的に経験するものや一般に想定されるもの等で通常弱い心理的負荷しか認められないものをいう。

心理的負荷の全体を総合的に評価して「強」と判断される場合、認定要件②を満たす。


<評価方法>

発病前おおむね6か月間に、対象疾病の発病に関与したと考えられる業務上の出来事とその後の状況を具体的に把握し、本人の主観ではなく、同種の労働者が一般的にどう受け止めるかという観点から心理的負荷の強度を判断する。


<特別な出来事>

発病前おおむね6か月間に、業務による出来事が「特別な出来事」に該当する場合、心理的負荷の総合評価は「強」と判断される。


<特別な出来事以外>

特別な出来事以外は、具体的出来事に当てはめ、出来事自体の心理的負荷、出来事後の状況、継続性、事後対応、職場環境の変化等を総合して「強」「中」「弱」を判断する。


<ハラスメント・いじめの評価>

ハラスメントやいじめのように、同じような出来事が繰り返されるものについては、繰り返される出来事を一体のものとして評価する。発病の6か月より前にハラスメント等が始まっていても、発病前おおむね6か月の期間にも継続しているときは、開始時からのすべての行為を評価の対象とする。


<既存の精神障害の悪化・症状安定後の新たな発病 基発0901第2号・基補発0901第1号>

・既に精神障害を発病し、治療が必要な状態にある者について、悪化前おおむね6か月以内に業務による強い心理的負荷が認められ、その心理的負荷によって精神障害が自然経過を超えて著しく悪化したと精神医学的に判断される場合は、悪化した部分について業務起因性が認められることがある。

・「治療が必要な状態」には、実際に治療を受けている場合だけでなく、医学的に治療が必要な状態にあると判断される場合も含まれる。

・通院又は服薬を継続している者であっても、症状が改善し安定した状態が一定期間継続した後に症状が生じた場合には、既存の精神障害の悪化ではなく、新たな精神障害の発病として判断する場合がある。

・既存の精神障害の悪化に当たるか、症状安定後の新たな発病に当たるかは、個別事案ごとに医学専門家の判断による。

・「一定期間」は個別に判断されるが、うつ病については、おおむね6か月程度、症状が安定して通常の勤務ができていた場合には、症状安定後の新たな発病として認定要件に照らして判断できる場合が多い。



【精神障害の労災認定における対象疾病】

<根拠>

・労働基準法施行規則 別表第1の2 第9号(精神および行動の障害)


<主な対象疾病(業務による心理的負荷が原因になりうるもの)>

・うつ病などの気分(感情)障害(F3系)

 例:うつ病、反復性うつ病、気分変調症

・急性ストレス反応・PTSD・不安障害(F4系)

 例:外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、不安障害

・非器質性睡眠障害(心理的負荷により医学的関連性が認められるもの)


<原則として対象外>

・統合失調症(器質的・先天的要因が大きい)

・アルコール依存症・薬物乱用(自己誘発的要因が強い)

・認知症、てんかん、知的障害(業務起因性が弱い)

・躁うつ病(双極性障害)※原則対象外だが、

 強い業務負荷との関連が明確な例のみ例外的に認められる場合あり




この記事では業務上疾病認定基準についてご紹介しました。

次回に続きます!










 


 
 

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