遺族厚生年金の給付①
- 筒井

- 7月22日
- 読了時間: 10分
更新日:8月16日
ここでは遺族厚生年金の給付についてお伝えします。
①基本・支給要件・特例ルール編
・【遺族厚生年金】
・【遺族厚生年金の短期要件と長期要件】
・【遺族厚生年金の資格期間不足者に対する特例措置】
・【遺族給付における保険料納付要件の経過措置(死亡時65歳未満)】
・【特例遺族厚生年金】
・【特例遺族厚生年金(高齢の妻対象)】
・【遺族厚生年金の「5年有期支給」ルール(30歳未満の子のない妻)】
・【納付要件の特例(障害・老齢年金受給者が死亡した場合)】
・【死亡したと推定する(厚生年金保険法第59条の2)】
【遺族厚生年金】
<支給される要件(いずれかに該当)>
・死亡日において厚生年金の被保険者であること
・被保険者資格喪失後、5年以内の被保険者期間中の傷病が原因で死亡
・障害等級1級または2級の障害厚生年金受給権者が死亡
・老齢厚生年金の受給資格期間(原則25年以上)を満たしている者が死亡
<受け取れる遺族(対象者)>
“生計を同じくしていた”以下の遺族が対象:
・妻(特に生計維持関係にあること)
・子(18歳到達年度末まで or 障害状態)
・55歳以上の父母・祖父母(支給開始は60歳〜)
・孫(18歳年度末まで or 障害状態)
※配偶者や子がいない場合に限り、親や孫へ支給される
<支給額>
・死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分 × “3/4”
※加給年金や経過的加算は含まれない
死亡以外の理由(婚姻・離縁・成年到達など)で受給権が消滅したときは、
他の遺族の支払うべき年金から差し引く(充当する)ことはできない‼️
併給のパターン | 結果 |
老齢厚生年金 + 遺族厚生年金 | 👉 遺族厚年の報酬比例部分が調整される |
中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算 | 👉 支給停止されない(そのまま支給) |
<特例>
名称 | 内容 | 要件 | 対象者 |
① 特例遺族厚生年金(高齢の妻対象) | 老齢年金を持たない妻に、夫の年金の1/2を支給 | 夫の厚生年金被保険者期間が10年以上 | 昭和31年4月1日以前生まれの60歳以上の妻 |
② 老齢年金の資格期間が満たない人の救済措置に基づく遺族厚生年金(特例) | 本来は遺族年金の対象外だけど、合算で20年以上ならOKになる特例 | 被保険者期間1年以上、かつ被保険者期間 |
【遺族厚生年金の短期要件と長期要件】
<短期要件>
以下のいずれかに該当する場合:
① 死亡日において厚生年金保険の被保険者であった
② 被保険者資格喪失後、5年以内の傷病により死亡した
③ 障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者だった
→ 上記のいずれかに該当すれば「短期要件」に該当し、
広い範囲の遺族(配偶者・子・孫・父母・祖父母)が対象となる
※生計維持関係が必要
<長期要件>
死亡者が老齢厚生年金の受給資格期間(原則25年)を満たしていた場合
→ 被保険者でなくてもよい
※対象遺族は短期要件より狭く、子や孫が含まれないケースもある
<まとめ>
・短期要件:現役中または障害者の死亡
・長期要件:老齢年金の資格がある者の死亡
・対象遺族の範囲が異なる点に注意(短期の方が広い)
項目 | 短期要件 | 長期要件 |
被保険者で死亡 | ✅ | ❌ |
老齢年金の受給資格がある | ❌ | ✅ |
申請なしでも自動適用される? | ✅(原則適用) | ❌(申し出が必要) |
寡婦加算に影響する可能性 | ⚠️あり(扱いが変わる場合あり) |
【遺族厚生年金の資格期間不足者に対する特例措置】
<制度の趣旨>
・本来は老齢年金や遺族年金の資格期間(25年)が満たせない人でも、
一定の要件を満たせば“特例的に”遺族厚生年金が支給される制度
・特に、旧共済組合員期間を持つ人や短期間の加入者への救済が目的
<支給のための特例要件>
① 死亡した人に厚生年金保険の被保険者期間が1年以上ある
② 被保険者期間と旧共済組合員期間の合算が20年以上ある
※原則25年必要だが、合算20年以上でOKになる特例
<対象となる遺族>
・通常の遺族厚生年金と同様
→ 妻、子、55歳以上の父母・祖父母、孫など
・“生計維持関係”があることが必要(=扶養されていた遺族)
<支給額>
・通常の遺族厚生年金と同じ計算式:
“死亡者の老齢厚生年金の報酬比例部分 × 3/4”
※加給年金や定額部分は含まれない
<制度別の支給額比較>
【高齢の妻への特例遺族厚生年金】
→ 報酬比例 + 定額部分の合計 × 1/2(=50%)
【資格期間不足の人の救済による遺族厚生年金】
→ 報酬比例部分 × 3/4(=75%)← 通常の遺族厚生年金と同じ
<注意ポイント>
・“老齢年金の資格期間を満たさない=遺族年金もNG”ではない!
・この特例があることで、救済されるケースが存在する
・旧共済の加入歴があるかどうかの確認が必要になることも
<納付要件に関する【経過的措置】>
・昭和36年4月1日以前生まれの人で、かつ65歳未満で死亡した場合に適用される
・70歳以上で死亡した場合には、この経過的措置は適用されない点に注意!
制度名 | 支給額の考え方 |
【高齢の妻への特例遺族厚生年金】 | 報酬比例 + 定額部分の合計 × 1/2(=50%) |
【資格期間不足の人の救済による遺族厚生年金】 | 報酬比例部分 × 3/4(=75%) ← 通常の遺族厚生年金と同じ |
【遺族給付における保険料納付要件の経過措置(死亡時65歳未満)】
<基本ルール>
・遺族厚生年金・遺族基礎年金を受け取るためには、
死亡した者が「保険料納付要件」を満たしている必要がある
<通常の保険料納付要件>
① 被保険者期間のうち「2/3以上」が納付済期間または免除期間
② 例外として「死亡日の前々月までの直近1年間に未納がない」場合もOK
<経過措置(死亡日が65歳未満の場合)>
→ 一定の要件を満たせば、「①の2/3要件を満たさなくてもOK」になる✨
<具体的な適用条件>
・死亡日において被保険者であり、かつ
・死亡日が“65歳未満”であること
→ この場合、「直近1年間に未納がなければOK」という経過措置が使える!
<対象となる給付>
・遺族基礎年金
・遺族厚生年金
(※障害年金の保険料納付要件にも同様の経過措置あり)
<注意ポイント>
・「65歳未満」は死亡者の年齢! 遺族の年齢ではない
・試験では「直近1年要件が使えるかどうか」の引っかけに注意⚠️
・今後経過措置は見直しの可能性もあるため、年度確認が必要
<まとめ>
・原則:保険料納付・免除期間が2/3以上必要
・例外:死亡日が65歳未満であれば、直近1年未納なしでもOK✨
・この経過措置のおかげで救済されるケースも多い!
【特例遺族厚生年金】
<制度の趣旨>
・高齢の妻(主に専業主婦)が、夫の死亡後に老齢年金の受給資格がない場合などに、
“最低限の生活保障”として特別に支給される厚生年金
<支給対象>
・次のすべてに該当する「妻」のみが対象(夫の死亡による支給)
① 昭和31年4月1日以前生まれの妻
② 夫の死亡当時、厚生年金の被保険者期間が10年以上ある
③ 妻に老齢基礎年金・老齢厚生年金などの受給権がない(=自分の年金がない)
④ 夫の死亡による遺族厚生年金の受給権がある
⑤ 60歳以上であること(支給開始年齢)
<支給内容>
・夫の遺族厚生年金と同じ額が支給される(=報酬比例部分の3/4)
・ただし、妻自身が他の年金を受給できるようになると、支給終了する
<注意ポイント>
・名称に「特例」がついているが、通常の遺族厚生年金に上乗せされるわけではない
・あくまで“妻本人に他の老齢年金がない”ときの限定的な特例
・寡婦加算や経過的寡婦加算と混同しやすいため要注意!
<試験での狙われポイント>
・対象は「妻のみ」で、夫には適用されない
・自分の老齢年金を受け取れるようになると、**特例遺族厚生年金は打ち切られる**
・昭和31年4月1日以前生まれという**超限定的な生年月日条件**に注意!
【特例遺族厚生年金(高齢の妻対象)】
<支給対象>
・次のすべてに該当する「妻」
① 昭和31年4月1日以前生まれ
② 夫の死亡当時、厚生年金の被保険者期間が10年以上ある
③ 妻に老齢年金(基礎年金・厚生年金)の受給権がない
④ 夫の死亡による遺族厚生年金の受給権がある
⑤ 妻が60歳以上であること(支給開始年齢)
<支給額(正確な表現)>
・夫が死亡した場合、
その夫が受けるはずだった“老齢厚生年金”(=報酬比例+定額部分)の額の
100分の50(=2分の1)が支給される
※つまり、通常の遺族厚生年金(報酬比例部分の3/4)とは支給額の考え方が異なる!
※「定額部分」も含む点がポイント!
<注意点>
・妻自身が老齢年金を受け取れるようになると、特例遺族厚生年金は終了
・他の寡婦加算や遺族年金とは併給不可(選択制)
・対象は「妻のみ」、夫には適用なし!
<まとめ>
・制度の目的:老齢年金の受給権がない高齢の専業主婦などへの救済措置
・支給額は「夫の老齢厚生年金の額 × 1/2」であり、定額部分も含まれる
・通常の遺族厚生年金(報酬比例部分の3/4)とは仕組みが異なる点に注意!
【遺族厚生年金の「5年有期支給」ルール(30歳未満の子のない妻)】
<制度の背景>
・本来、遺族厚生年金は一生涯支給されるものだが、
若くて就労可能性が高い30歳未満の妻には、例外的に「有期支給(5年間)」となる場合がある。
<対象者>
・遺族厚生年金の受給権者となる配偶者(妻)で、
・受給権発生時に30歳未満
・かつ子がいない
→ この場合、支給開始から5年間のみ受給できる(有期支給)
<支給終了のタイミング>
・原則として、受給開始から5年経過後に支給停止
・または、以下のように遺族基礎年金の受給権を失った時点で終了となるケースもある:
→ 遺族厚生年金と同一の支給事由によって遺族基礎年金を受けていた30歳未満の妻が、
遺族基礎年金の受給権を失ったときは、同時に遺族厚生年金の支給も打ち切りとなる。
<例外的に終身支給になるケース>
・子がいる(子のある遺族として、年齢に関係なく終身支給)
・寡婦加算対象となる(子のある妻だったが、後に基礎年金が消滅)
・30歳到達後に中高齢寡婦加算の要件を満たした場合(65歳未満)
<よくある混乱ポイント>
・30歳になったら復活する → 復活しない。一度終了したら戻らない
・離婚や再婚で条件が変わる → 関係なし
・30歳未満かつ子なしは、例外的な短期支給と覚えておく
<対策ポイント>
・30歳未満・子なしは5年有期支給 → 試験でひっかけられやすい!
・子ありなら終身、子なしなら年齢次第という流れをつかんでおく
【遺族厚生年金|納付要件の特例(障害・老齢年金受給者が死亡した場合)】
<原則>
・遺族厚生年金の支給には「保険料納付要件」が必要
→ 死亡日の前日時点での納付状況を確認
<特例>
・以下の人が死亡した場合は、納付要件を“問わない”
・障害厚生年金の受給権者
・老齢厚生年金の受給権者
<理由>
・すでに年金を受け取っている=納付要件を満たしていた証拠あり
・再確認の必要なし(審査済み)
<試験ポイント>
・「障害厚生年金の受給中に死亡」→ 納付要件のチェック不要
・「老齢厚生年金の受給中に死亡」→ 同様にチェック不要
・「現役の被保険者として死亡」→ 通常どおり納付要件が必要
<覚え方>
・年金受給中に死亡 → 納付要件は「済」扱い
・まだ受給前に死亡 → 納付要件は「要確認」
【死亡したと推定する(厚生年金保険法第59条の2)】
<概要>
船舶が沈没・転覆・滅失、または行方不明となった場合に、その船に乗っていた被保険者等の生死が不明なときに適用される特例。
<適用要件>
・船舶に乗っていた被保険者等が行方不明
・行方不明のまま死亡か生存かが一定期間(3か月)明らかにならない
・死亡の時期も不明
<取扱い>
・遺族厚生年金の支給規定の適用については、その船舶が沈没等した日または行方不明となった日を「死亡した日」とみなす(死亡したと推定する)
<根拠期間>
・B欄:3か月以内に明らかにならない場合
<死亡日とみなす日>
・C欄:船舶が沈没・転覆・滅失・行方不明となった日、またはその者が行方不明となった日
この記事では遺族厚生年金の給付についてご紹介しました。
次回に続きます!


