障害(補償)等年金
- 筒井

- 11月25日
- 読了時間: 6分
更新日:12月4日
ここでは障害(補償)等年金についてお伝えします。
【障害(補償)年金まとめ|1〜7級】
<対象>
業務災害や通勤災害で負傷・発病し、治った後に障害が残り、
障害等級1〜7級に該当する場合に支給される。
<支給額(給付基礎日額 × 年額日数)>
1級:313日分
2級:291日分
3級:245日分
4級:213日分
5級:184日分
6級:156日分
7級:131日分
<併合>
複数の障害がある場合は、原則「重い等級」に一本化される。
<繰上げの基準>
・5級以上の障害が2つ → +3級繰上げ
・8級以上の障害が2つ → +2級繰上げ
・13級以上の障害が2つ → +1級繰上げ
<加重>
既存障害があり、後の災害でさらに障害が重くなった場合は、
加重後の障害等級に応じた額から、既障害相当額を控除する。
<変更>
障害の程度が変動した場合、等級に応じて年金額を増額・減額。
自然的治癒による軽減でも支給停止とはならない。
<再発>
再発時はいったん支給打切り。
治ゆ後、あらためて障害等級に応じて再支給される。
<打切りの有無(重要ポイント)>
傷病(補償)年金には「打切り」があるが、障害(補償)等給付には打切りがない。
一度認定された障害等級の給付は、原則継続する。
【障害(補償)一時金|完全版】
<対象>
障害等級8〜14級に該当する場合に、一時金として支給される。
<支給額(給付基礎日額 × 日数)>
8級:503日分
9級:391日分
10級:302日分
11級:223日分
12級:156日分
13級:101日分
14級:56日分
<性質>
・1回限りの給付
・受給後に再発しても再請求は不可
(※再発の場合は「障害補償年金」の再発ルールが別途適用される)
<注意>
・年金該当(1〜7級)の場合は一時金ではなく年金へ切り替わる
【障害(補償)等年金前払一時金】
<趣旨>
障害(補償)年金を、本来の支払期より前にまとめて受け取り、
社会復帰や生活再建に充てられるようにした制度。
<対象>
障害(補償)年金の受給権者で、前払いを希望する者。
<支給額>
等級ごとに、給付基礎日額 × 所定日数から選択して受け取る。
前払日数は等級ごとに複数の選択肢が政令で定められている。
<等級別・選択可能日数>
1級:200・400・600・800・1000・1200・1340
2級:200・400・600・800・1000・1200・1190
3級:200・400・600・800・1050
4級:200・400・600・800・930
5級:200・400・600・800
6級:200・400・600・800
7級:200・400・600・800
<請求の原則>
・同一事由について 1回に限り請求可能
・障害(補償)年金の裁定請求と同時に提出することもできる
・請求期限は設けられていない(=いつでも請求可能)
<支給停止>
前払一時金に相当する期間は、通常の障害(補償)年金は支給停止となる。
前払分が尽きた後、通常の支給に戻る。
<注意>
・前払一時金は「年金の前倒し」であり、新しい給付ではない
・返還義務はない
・受給権自体は消滅せず、停止期間終了後に年金が再開する
<支給時期の原則>
前払一時金は、次の支払期月(奇数月)に支給される。
支払期月:1月・3月・5月・7月・9月・11月
【障害(補償)等年金差額一時金】
<趣旨>
障害(補償)等年金を受ける権利者が「死亡した場合」、
それまでに支給された障害(補償)年金額の合計が、
本来受け取れたはずの前払一時金の「最高限度額」に満たないとき、
その差額を一時金として遺族に支給する制度。
<支給要件>
・障害(補償)年金の受給権者が死亡したこと
・生前に受給した総額 < 前払一時金の最高限度額
→ この差額分を支給
<支給額>
差額一時金=
前払一時金の最高限度額 − 生前受給した障害(補償)年金額の合計
<受給順位(最先順位→次順位)>
① 死亡時に生計を同じくしていた
配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
② 上記①に該当しない
配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
※最先順位者が複数いるとき → 全員が受給権者
支給額は均等割り
<重要ポイント>
・「死亡労働者と生計同一だったか」が順位を分ける
・“弟や兄”が受け取るケースは珍しいが、
生計維持関係があれば最先順位になりうる
・差額一時金は“前払一時金の最高額”が基準であり、
前払請求を実際にしていたかどうかは関係ない
【障害等級表|具体的な障害と、表に掲げられていない障害の扱い】
<基本>
障害(補償)年金・障害(補償)一時金の等級は、
労災保険法施行規則に掲げる「障害等級表」に基づいて決定される。
等級表にある障害は以下のとおり。(代表的なものを抜粋)
<第1級(年金)>
・両眼の失明
・両上肢の手関節以上の欠損
・両下肢の足関節以上の欠損
・脊柱の著しい変形で常時介護が必要
・重度の精神・神経障害(常時介護)
<第2級(年金)>
・一眼失明+他眼視力0.04以下
・両上肢・両下肢の著しい機能障害
・精神・神経障害(随時介護)
・高度の言語障害・咀嚼障害
<第3級(年金)>
・一眼失明
・一上肢手関節以上の欠損
・一下肢足関節以上の欠損
・脊柱の著しい機能障害
・平衡機能の喪失
<第4級(年金)>
・両耳の全ろう
・一上肢の著しい機能障害
・一下肢の著しい機能障害
・胸腹部臓器の重度機能障害
<第5級(年金)>
・一耳ろう+他耳の高度難聴
・手指のほとんどを失う
・足指のほとんどを失う
<第6級(年金)>
・両眼視力が0.1以下
・肩・肘・膝などの高度機能障害
・著しい平衡障害
<第7級(年金)>
・両眼視力が0.1と0.2以下
・一耳の聴力喪失
・上肢・下肢の軽度機能障害
—— ここから一時金(8〜14級)——
<第8級(一時金)>
・両眼視力0.1と0.6以下
・手関節・足関節の著しい障害
・外貌の著しい醜状
<第9級(一時金)>
・両眼視力0.2以下
・上肢2指、下肢2指の欠損
・比較的大きな外貌醜状
<第10級(一時金)>
・一眼視力0.1以下
・手指2本・足指2本の機能喪失
<第11級(一時金)>
・一眼視力0.6以下
・手指3本、足指3本の用を失う
<第12級(一時金)>
・一眼視力0.7以下
・手指・足指の部分的喪失
・軽度の外貌醜状
<第13級(一時金)>
・上肢または下肢の1指欠損
・軽い外貌の損傷
<第14級(一時金)>
・軽微な視力・聴力障害
・手指・足指の軽度障害
・わずかな外貌変形
<等級表に掲げられていない障害の扱い(重要)>
障害等級表に具体的な記載がない障害の場合でも、
次の要素を基準に「等級表内でもっとも類似する障害」に対応づけて等級を決定する。
・障害の種類
・機能低下の程度
・労働能力や日常生活動作への支障の大きさ
・等級表内の類似障害との比較
これにより、等級表に記載されていない特殊な障害でも、
等級表の趣旨に従い適切な等級に認定される。
※ポイント
障害等級表は「限定列挙」ではなく、「代表例の列挙」。
→ 記載されていなくても、障害の内容から等級を定めることができる。
【自然的経過による変動|軽減と増進の取扱い】
<自然的軽減(重い→軽い)>
年金等級(1〜7級)→ 一時金等級(8〜14級)へ下がった場合は、
新しい等級の障害補償一時金を支給し、年金は終了する。
(=年金 → 一時金 の例外的切替)
<自然的増進(軽い→重い)>
一時金等級(8〜14級)→ 年金等級(1〜7級)に上がっても、
新しい等級の障害補償年金は支給されない。
(最初に一時金を受けていれば、その後は一時金で完結)
<ポイント>
・切替が起きるのは「自然的軽減」のときだけ。
・「自然的増進」では年金へは移行せず、追加給付もない。
【一時金の併合|繰上げ後の等級は使わない仕組み】
<基本ルール>
一時金等級(8〜14級)の障害が複数ある場合、
併合により“等級が繰り上がる”ことはあるが、
支給される一時金の額は「繰上後の等級日数」では計算しない。
<支給方法>
・各障害ごとに本来の等級(日数)で一時金を算定し、
その日数を合算して支給する。
<例>
9級の障害 + 13級の障害 がある場合
支給額 = 9級の一時金日数 + 13級の一時金日数
(繰上げ等級が何級になっても、繰上げ後の日数は用いない)
この記事では障害(補償)等年金についてご紹介しました。
次回に続きます!


