後期高齢者と医療広域連合
- 筒井

- 7月24日
- 読了時間: 9分
更新日:8月14日
ここでは後期高齢者と医療広域連合についてお伝えします。
【後期高齢者医療広域連合】
<制度の位置づけ>
・75歳以上の後期高齢者を対象とする「後期高齢者医療制度」の運営主体(保険者)。
・都道府県ごとに、市町村が加入して設立される「特別地方公共団体(広域連合)」。
・都道府県そのものは加入せず、構成団体ではない点に注意。
<構成>
・各都道府県のすべての市区町村が加入。
・地方自治法に基づく「地方公共団体の組合」として設置。
・各都道府県に原則1つ(複数は設立されない)。
<主な役割>
・制度運営全般(保険者機能)。
・保険料の賦課・徴収(実際の徴収事務は市町村が代行)。
・資格認定と被保険者証の発行。
・保険給付(診療報酬の支払い等)。
・国や都道府県からの交付金の受け入れ・管理。
<国・都道府県の役割>
・財政支援(国が約50%、都道府県が約25%を負担)。
・制度の安定運営のための補助金・交付金を支出。
<注意ポイント>
・広域連合は、厚生労働大臣や都道府県知事の「下部組織」ではなく、独立した自治体。
・監督対象ではあるが、直接的な指揮命令を受ける機関ではない。
・市町村は広域連合の構成員であり、窓口業務や徴収事務は委託を受けて実施。
<豆知識>
・広域連合の議会や長(首長)は、市町村の代表者から選出される。
・健康保険組合や協会けんぽとは異なり、「地域単位の自治体保険者」である点が特徴。
<後期高齢者医療制度保険給付まとめ表>
給付の種類 | 内容 |
✅ 療養の給付 | 医療機関での診療・薬・入院などにかかる費用の給付(保険証で受診) |
✅ 療養費 | やむを得ず保険証を使えなかったときの立替払い分の払い戻し(償還払い) |
✅ 移送費 | 急病などで移動が困難な場合にかかる医師の指示による移送費(条件あり) |
✅ 葬祭費 |
✅ 傷病手当金・出産手当金はなし!(→75歳以上には現役並みの就労・出産が基本想定されていない)
✅ 介護保険は別制度(要介護認定を受ける)
✅ 保険料は所得と均等割で計算(広域連合が決める)
【後期高齢者医療制度|被保険者と保険料徴収方法】
<被保険者の条件>
・原則:75歳以上の者
・例外:65〜74歳で一定の障害があり、広域連合の認定を受けた者
<保険料徴収の対象>
・上記の被保険者全員が対象(所得に応じて保険料額が決まる)
<保険料徴収方法>
・特別徴収(原則)
老齢等年金を受給している被保険者(政令で定める除外者を除く)
→ 年金から天引き
・普通徴収(例外)
年金を受給していない者、または政令で除外された者
→ 市町村からの納付書や口座振替で納付
【後期高齢者医療広域連合と市町村の役割】
<広域連合の概要>
・都道府県単位で設置される特別地方公共団体。
・都道府県内のすべての市町村が加入する。
・法的根拠は高齢者の医療の確保に関する法律(高医法)。
<広域連合の役割>
・後期高齢者医療制度の運営主体(保険者)。
・保険料率の決定、給付の実施、制度全体の管理運営などを行う。
・都道府県や国の「下部機関」ではなく、独立した自治体として存在。
<市町村の役割>
・広域連合から委託を受けた事務を実施。
・主な担当事務:
- 保険料の徴収(普通徴収・特別徴収)
- 被保険者証の交付窓口
- 資格取得・喪失、住所変更等の届出受付
・県内の各市町村役場が、広域連合の事務の一部を分担して行っている。
<イメージ>
・広域連合=制度運営の本社
・市町村=住民に身近な窓口業務を行う営業所
<医療費適正化計画(全国版/都道府県版)>
※この計画は、後期高齢者医療制度と同じ「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に規定されており、制度的には別でも同一法体系に含まれる。
【全国版(全国医療費適正化計画)】
・策定者:厚生労働大臣
・目的:国全体として医療費適正化を総合的・計画的に推進
・根拠:高齢者医療確保法 第9条1項
・内容:
- 医療費適正化に関する施策の「医療費適正化基本方針」を定める
- 6年ごとに、6年を1期として全国計画を策定
・名称:「全国医療費適正化計画」
【都道府県版(都道府県医療費適正化計画)】
・策定者:都道府県
・目的:各都道府県内での医療費適正化を推進
・根拠:高齢者医療確保法 第9条3項
・内容:
- 国の「医療費適正化基本方針」に即して計画を作成
- 6年ごとに、6年を1期として策定
・名称:「都道府県医療費適正化計画」
【期間とタイミング】
・全国版と都道府県版は同じ6年間を1期として動く
・流れ:
① 厚生労働大臣が「基本方針」を策定
② 同時に「全国医療費適正化計画」を策定
③ 都道府県はこれを受けて自県の計画を策定
【埋葬料・葬祭費まとめ】
<健康保険の場合>
・根拠法:健康保険法
・支給名称:
- 被保険者が死亡 → 「埋葬料」
- 被扶養者が死亡 → 「埋葬費」
・支給対象:
- 被保険者または被扶養者が亡くなった場合
・支給額:
- 原則5万円(健康保険組合によっては上乗せあり)
・請求先:加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合など)
・支給主体:健康保険組合や全国健康保険協会
・備考:75歳未満の被保険者・被扶養者が対象
<後期高齢者医療制度の場合>
・根拠法:高齢者の医療の確保に関する法律(条例)
・支給名称:葬祭費
・支給対象:
- 後期高齢者医療の被保険者が亡くなった場合
・支給額:
- 多くの自治体で3〜5万円(条例で定める)
・請求先:後期高齢者医療広域連合
・支給主体:後期高齢者医療広域連合
・備考:条例により全部または一部を支給しないことができる場合あり(特別な理由があるとき)
<制度切替のポイント>
・75歳到達時に健康保険や国保を脱退 → 後期高齢者医療制度へ自動加入
・これに伴い、埋葬料(健康保険)→葬祭費(後期高齢者医療)へ名称・制度が切り替わる
・保険料も「健康保険料」→「後期高齢者医療保険料」に切り替わる
【後期高齢者医療の傷病手当金と健康保険の違い】
<健康保険の傷病手当金>
・法定給付(必ず支給することが法律で定められている)
・業務外の病気やケガで働けない場合に、支給条件を満たせば必ず支給
・全国一律で制度がある
<後期高齢者医療の傷病手当金>
・任意給付(広域連合が条例で定めた場合のみ支給)
・やるかどうか、内容や金額は広域連合ごとに異なる
・支給しない地域もある
・分類上は「任意給付」に位置づけられる(他には法定給付の「療養の給付」、相対的必要給付の「葬祭費」などがある)
<まとめ>
・健康保険:傷病手当金は必須の法定給付
・後期高齢者医療:傷病手当金は地域ごとのオプション給付
【世帯主による届出の代理(高齢者医療確保法)】
<根拠条文>
・高齢者医療確保法 第54条第1項
<内容>
・被保険者の資格の取得や喪失、その他必要な事項については、被保険者本人が届出を行うのが原則。
・ただし、被保険者が属する世帯の世帯主は、その被保険者に代わって届出をすることができる。
<ポイント>
・「できる」とされており、世帯主に代理権が付与されている。
・代理届出は義務ではなく、あくまで可能(任意)である。
・対象は資格取得・喪失など重要な届出事項。
<誤りやすい点>
・世帯主以外の親族や同居人は、この規定による代理届出はできない。
・「必ず世帯主が届け出なければならない」わけではない。
【保険料徴収事務の委託ルール】
<概要>
市町村(特別区を含む)は、普通徴収によって徴収する保険料の徴収事務について、収入確保や被保険者の利便性向上に寄与すると認められる場合に限り、地方自治法第243条の2第1項に基づいて外部に委託できる。
<委託できる相手>
・地方自治法第243条の2第1項に定められた「公金事務」を確実に遂行できる者。
・政令で定める者のうち、当該普通地方公共団体の長が総務省令で定める手続により指定した者。
・例:他の地方公共団体、一定の公的団体、金融機関、コンビニ収納本部など。
<委託できる事務>
・公金事務のうち、保険料の徴収や収納、支出に関する業務。
<目的>
・保険料収入の確保
・被保険者の利便性の向上
【高齢者医療確保法54条3項の規定による求め】
<趣旨>
・本来、後期高齢者医療の資格確認はマイナンバーカード等による電子資格確認で行う。
・しかし、電子資格確認ができない場合の代替手段として、第3項が規定されている。
<内容>
・電子資格確認ができない状態にある被保険者は、
「資格確認書の交付」または
「被保険者資格に関する事実を記載した書面の交付」
(電磁的方法による提供を含む)
を求めることができる。
<具体例>
・機器の故障や通信障害で電子資格確認ができないとき
・マイナンバーカード未取得や読み取り不良の場合
<ポイント>
・54条3項の「求め」とは、資格証明の書面交付や電磁的提供の請求権を指す。
・資格確認の予備ルールとして押さえておく。
【後期高齢者医療審査会】
<役割>
・後期高齢者医療制度における処分に不服がある場合に、審査請求を受け付ける機関。
<対象となる処分>
・後期高齢者医療給付に関する処分(高齢者医療確保法54条3項の求めに対する処分を含む)
・保険料その他の高齢者医療制度に関する徴収金(市町村や広域連合が徴収するもの)に関する処分
<請求できる人>
・上記の処分に不服がある被保険者など
<ポイント>
・審査請求先は「後期高齢者医療審査会」
・行政不服審査法の特例として位置づけられる
【後期高齢者医療制度|必須給付と任意給付の違い】
<必須給付>
・法律(高齢者医療確保法 等)で「支給しなければならない」と定められている給付
・全国一律で実施され、広域連合に裁量はない
・例:
- 療養の給付
- 療養費
- 高額療養費
- 特別療養費(高齢者医療確保法76条1項)
- 移送費 など
<任意給付>
・法律上「行うことができる」とされ、広域連合が条例等で実施可否や範囲を決定
・地域ごとに制度の有無や内容が異なる
・例:
- 保険外併用療養費(選定療養・申出療養など)
- 付加給付
- 上乗せ給付 など
<特別療養費の位置づけ>
・必須給付に該当
・被保険者が急病ややむを得ない事由で保険証を持たずに治療を受けた場合などに、後から費用の一部を払い戻す制度
・全国共通ルールで必ず支給されるため、地域差なし
この記事では後期高齢者と医療広域連合についてご紹介しました。
次回に続きます!


