労働条件通知書の明示義務
- 筒井

- 2024年6月21日
- 読了時間: 3分
更新日:10月17日
ここでは労働条件通知書の明示義務についてお伝えします。
【労働条件通知書の明示義務(労働基準法第15条・施行規則第5条の3)】
<概要>
・入社時に会社と交わす「労働契約」では、使用者に対して労働条件を書面の交付により明示する義務がある。
・これは労働者が安心して働くための基本ルールであり、会社は記載漏れがないようチェックが必要。
<絶対的明示事項(必ず書かなければならない項目)>
1.労働契約の期間(有期か無期か)
・有期の場合、原則3年以内。高度専門職や60歳以上は5年以内まで可。
2.有期労働契約の更新基準
・契約を更新する場合の基準(期間・回数の上限など)を明示すること。
・更新の有無や判断基準を明確に記載する必要がある。
3.就業の場所・従事する業務
・勤務地と担当業務を明示。変更の可能性がある場合はその範囲も記載。
4.始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替勤務の方法
・労働時間のルールや勤務形態を具体的に明記する。
5.賃金の額、計算・支払方法、締切日・支払日、昇給の有無
・基本給・手当・賞与などの扱いも含めて明確にする。
6.退職・解雇に関する事項
・退職の手続きや解雇の事由を具体的に示す。
<相対的明示事項(労働者からの求めがあれば明示する項目)>
・退職手当、臨時の賃金・賞与・最低賃金以外の手当
・安全・衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁など
・休職制度やその他の就業規則に関する事項
→ 書面でなく口頭明示も可(施行規則第5条の4)
<法的効果>
・明示された労働条件が労基法の基準に達していない場合、その部分は「無効」となり、
労基法の基準に自動的に引き上げられる(直律的効力・強行法規)。
<虚偽の明示と解除権>
・明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除できる。
・就労のために転居していた場合、解除から14日以内に帰郷する際は「旅費請求」が可能。
(労基法第15条第2項)
≪ポイント≫
・労働条件通知書は「労働契約の証明書」。
・労働者:記載内容を必ず確認。
・使用者:記載漏れ・虚偽記載に注意。
・基準に満たない内容は無効になり、法定基準が自動適用される。
【社宅と労働条件の扱い】
<原則>
・労基法15条の「労働条件」には、法律と施行規則で列挙された事項のみが含まれる
・福利厚生施設(社宅・寮・食堂など)は原則として労働条件に含まれない
<社宅が労働条件に含まれない場合>
・求人票や雇用契約書の「福利厚生欄」に記載されている
・単なる福利厚生サービスとして提供されている
・この場合、入社後に提供をやめられても労基法15条2項の解除権は使えない
・例:「社宅あり」と書いてあっても、後から廃止されても法律上は文句を言えない(※民事上の争いは別)
<社宅が労働条件に含まれる場合>
・勤務地や勤務形態からして社宅提供が労務遂行に不可欠
・社宅提供が賃金の一部(現物給与)として扱われている
・労働契約書の「労働条件欄」に明示され、重要な契約条件として合意されている
・この場合、一方的な撤回は労基法15条2項の解除権の対象となる可能性あり
<実務での書き方>
・原則:社宅は福利厚生欄に記載
・現物給与扱いの場合:賃金欄に「社宅提供(家賃〇円相当)」と記載
この記事では労働契約書についてご紹介しました。
次回に続きます!


