■厚生年金保険法(不服申立て・時効・罰則・財政・保険料・積立金)
- 筒井

- 4月16日
- 読了時間: 13分
更新日:49 分前
ここでは不服申立て・時効・罰則・財政・保険料・積立金についてお伝えします。
【厚生年金保険の不服申立て】
<通常の不服申立て(法90条1項)>
厚生労働大臣による次の処分に不服がある者は、社会保険審査官に審査請求をすることができる。
・被保険者の資格に関する処分
・標準報酬に関する処分
・保険給付に関する処分
社会保険審査官の決定に不服がある者は、社会保険審査会に再審査請求をすることができる。
※再審査請求をせず、社会保険審査官の決定後に取消訴訟を提起することもできる。
<審査請求の期間(社審法4条)>
・原則
→ 処分があったことを知った日の翌日から3か月以内
・正当な事由により期間内に審査請求できなかったことを疎明した場合
→ 3か月経過後も審査請求できる
・被保険者の資格又は標準報酬に関する処分
→ 原処分があった日の翌日から2年を経過すると審査請求できない
※2年の制限は、保険給付に関する処分には適用されない。
<再審査請求の期間(社審法32条)>
・社会保険審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から2か月以内
・正当な事由により期間内に再審査請求できなかった場合は、期間経過後も再審査請求できる
<2か月以内に決定がない場合(法90条3項)>
審査請求をした日から2か月以内に社会保険審査官の決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなすことができる。
→ 再審査請求又は取消訴訟へ進むことができる
※自動的に棄却されるのではなく、審査請求人が棄却されたものとみなすことができる。
<審査請求と訴訟との関係(法91条の3)>
法90条1項の処分の取消訴訟は、原則として、社会保険審査官の決定を経た後でなければ提起できない。
ただし、次の場合は、社会保険審査官の決定前でも提起できる。
・審査請求から2か月を経過しても決定がない場合
・処分等による著しい損害を避けるため緊急の必要がある場合
・その他正当な理由がある場合
<資格・標準報酬に関する処分の確定(法90条5項)>
被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは、その処分の違法を、当該処分に基づく保険給付に関する処分への不服の理由とすることはできない。
<第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者に関する処分(法90条2項)>
各実施機関による被保険者の資格又は保険給付に関する処分に不服がある場合は、次の機関に審査請求をする。
・第2号厚生年金被保険者
→ 国家公務員共済組合審査会
・第3号厚生年金被保険者
→ 地方公務員共済組合審査会
・第4号厚生年金被保険者
→ 日本私立学校振興・共済事業団の共済審査会
<保険料等に関する処分(法91条)>
厚生労働大臣による次の処分に不服がある者は、社会保険審査官を経由せず、社会保険審査会に審査請求をする。
・保険料その他の徴収金の賦課又は徴収
・督促
・滞納処分
審査請求期間は、原則として、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内である。
第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者に係る保険料等の処分については、それぞれの共済の審査会に審査請求をする。
<脱退一時金に関する処分(附則29条6項~8項)>
厚生労働大臣による脱退一時金に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官を経由せず、社会保険審査会に審査請求をする。
第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者に係る脱退一時金の処分については、それぞれの共済の審査会に審査請求をする。
<厚生年金保険原簿の訂正(法28条の2・28条の4・90条1項ただし書)>
第1号厚生年金被保険者又は第1号厚生年金被保険者であった者は、自己の資格取得・資格喪失・標準報酬等の記録が事実と異なる場合、厚生労働大臣に厚生年金保険原簿の訂正を請求できる。
訂正又は不訂正の決定は、社会保険審査官及び社会保険審査会による通常の不服申立ての対象外である。
決定に不服がある場合は、行政不服審査法による厚生労働大臣への審査請求又は取消訴訟による。
※原簿訂正については、審査請求を経ずに直接訴訟を提起することもできる。
【時効(法92条)】
<保険料等>
・保険料その他の徴収金を徴収する権利
→ 行使できる時から2年
・保険料その他の徴収金の還付を受ける権利
→ 行使できる時から2年
・納入の告知又は督促
→ 時効を更新する
<保険給付>
・保険給付を受ける基本権
→ 支給すべき事由が生じた日から5年
・支払期月ごとに保険給付を受ける支分権
→ その支払期月の翌月初日から5年
・保険給付の返還を受ける権利
→ 行使できる時から5年
<時効の援用等(法92条2項)>
次の権利の時効は、援用を要せず、その利益を放棄することができない。
・保険料その他の徴収金を徴収する権利
・保険料その他の徴収金の還付を受ける権利
・保険給付の返還を受ける権利
<全額支給停止中の時効(法92条3項)>
年金たる保険給付が全額支給停止されている間は、その年金を受ける権利の時効は進行しない。
※一部のみ支給停止されている間は、時効は進行する。
【期間の計算(法93条)】
厚生年金保険法又は同法に基づく命令に規定する期間の計算は、別段の定めがある場合を除き、民法の期間に関する規定を準用する。
<被保険者に対する情報の提供(法31条の2)>
実施機関は、厚生年金保険制度に対する国民の理解を増進させ、その信頼を向上させるため、被保険者に対し、次の情報を分かりやすい形で通知する。
・当該被保険者の保険料納付の実績
・将来の給付に関する必要な情報
※この規定に基づく通知が「ねんきん定期便」である。国民年金とは別に厚生年金専用の通知が届くのではなく、国民年金・厚生年金の加入記録や年金見込額などがまとめて通知される。
<実施機関相互の情報提供(法100条の2第1項)>
実施機関は、相互に次の情報を提供する。
・被保険者の資格に関する事項
・標準報酬に関する事項
・保険給付の支給状況
・その他実施機関の業務に必要な情報
<官公署への資料提供の求め(法100条の2第2項)>
実施機関は、被保険者の資格、標準報酬又は保険料に関し必要があると認めるときは、官公署に対し、事業所の名称・所在地その他必要な資料の提供を求めることができる。
<標準報酬平均額等の報告(法100条の3)>
厚生労働大臣以外の実施機関は、標準報酬平均額の算定に必要な事項を、その実施機関を所管する大臣を経由して、厚生労働大臣に報告する。
厚生労働大臣は、標準報酬平均額その他これに関連する事項を、実施機関を所管する大臣に報告する。
<戸籍事項の無料証明(法95条)>
市町村長は、条例の定めるところにより、実施機関又は受給権者に対し、被保険者、被保険者であった者又は受給権者の戸籍に関する証明を無料で行うことができる。
【書類の保存(則28条)】
<事業主の保存義務>
事業主は、厚生年金保険に関する書類を、その完結の日から2年間保存しなければならない。
【罰則】
<事業主に対する罰則(法102条1項)>
事業主が正当な理由なく次の行為をした場合は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。
・被保険者の資格の取得及び喪失に関する届出をしない又は虚偽の届出をする
・報酬月額又は賞与額に関する届出をしない又は虚偽の届出をする
・被保険者等への通知をしない
・督促状に指定された期限までに保険料を納付しない
<事業主による立入検査拒否等(法102条2項)>
適用事業所等の事業主が正当な理由なく次の行為をした場合は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられる。
・文書その他の物件を提出しない
・質問に答弁しない又は虚偽の陳述をする
・検査を拒み、妨げ又は忌避する
<事業主以外の者による立入検査拒否等(法103条)>
適用事業所等の事業主以外の者が、質問に答弁せず、虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ若しくは忌避した場合は、6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処せられる。
<滞納処分のための調査拒否等(法103条の2)>
国税徴収法の例による質問・検査・物件の提示又は提出の要求に対し、拒否、虚偽の陳述又は虚偽資料の提出等をした者は、50万円以下の罰金に処せられる。
<両罰規定(法104条)>
法人等の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人等の業務又は財産に関して違反行為をした場合は、行為者のほか、その法人等にも罰金刑が科される。
【財政】
<財政均衡の原則(法2条の3)>
厚生年金保険事業の財政は、長期的に均衡が保たれたものでなければならない。
著しく均衡を失すると見込まれる場合は、速やかに必要な措置を講じなければならない。
<財政の現況及び見通し(法2条の4)>
政府は、少なくとも5年ごとに、次の事項について現況及び財政均衡期間における見通しを作成しなければならない。
・保険料
・国庫負担
・保険給付に要する費用
・その他厚生年金保険事業の財政上の収支
財政均衡期間は、財政の現況及び見通しを作成する年以降、おおむね100年間とする。
政府は、財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく公表しなければならない。
<国庫負担等(法80条)>
・政府が負担する基礎年金拠出金
→ 国庫がその2分の1を負担する
・厚生年金保険事業の事務の執行に要する費用
→ 国庫が毎年度、予算の範囲内で負担する
※基礎年金拠出金の負担に関する事務を含む
※厚生労働大臣以外の実施機関による事務の執行に要する費用は除く
・厚生労働大臣以外の実施機関が納付する基礎年金拠出金及び事務費
→ 厚生年金保険法に定めるもののほか、共済各法の定めるところにより負担する
<実施機関への交付金(法84条の3)>
政府は、政令で定めるところにより、毎年度、厚生労働大臣以外の実施機関ごとに、その実施機関に係る厚生年金保険給付費等として算定した額を、交付金として交付する。
※交付先は、厚生労働大臣を除く実施機関である。
【保険料】
<保険料の徴収対象月・額(法19条1項・法81条2項・3項)>
保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月について徴収する。
・毎月の保険料
→ 標準報酬月額×保険料率
・賞与に係る保険料
→ 標準賞与額×保険料率
被保険者期間は、被保険者の資格を取得した月から、その資格を喪失した月の前月までを算入する。
例:1月15日に資格を取得し、3月30日に資格を喪失した場合
→ 保険料の徴収対象月は1月・2月
賞与が支払われた月に資格を喪失した者については、その賞与に係る保険料は徴収しない。
※資格喪失月は被保険者期間に算入されないため、前月から引き続き被保険者であった場合でも同じ。
<保険料率(法81条4項、平成24年改正法附則83条~85条)>
・第1号厚生年金被保険者
→ 平成29年9月以後、1,000分の183.00
・第2号・第3号厚生年金被保険者
→ 平成30年9月以後、1,000分の183.00
・第4号厚生年金被保険者
→ 段階的に引き上げ、令和9年4月以後、原則として1,000分の183.00
※最終的に、すべての種別の保険料率が1,000分の183.00に統一される。
<同時に2以上の事業所に使用される者の保険料負担(法82条3項・令4条1項)>
同時に2以上の事業所(船舶を除く)に使用される第1号厚生年金被保険者について、各事業主が負担する標準報酬月額に係る保険料額は、被保険者に係る保険料額の2分の1を、各事業所における報酬月額相当額に比例して按分した額とする。
<育児休業期間中の保険料免除(法81条の2)>
育児休業等をしている第1号厚生年金被保険者について、適用事業所の事業主が厚生労働大臣に申出をした場合は、一定の育児休業等期間に係る保険料を徴収しない。
高齢任意加入被保険者についても、事業主が厚生労働大臣に申出をすることにより、育児休業等期間中の保険料は免除される。
申出を行うのは被保険者本人ではなく、その被保険者を使用する事業所の事業主である。
<産前産後休業期間中の保険料免除(法81条の2の2)>
産前産後休業をしている第1号厚生年金被保険者について、適用事業所の事業主が厚生労働大臣に申出をした場合は、産前産後休業期間に係る保険料を徴収しない。
免除期間は、産前産後休業を開始した日の属する月から、その産前産後休業が終了する日の翌日が属する月の前月までである。
<保険料の源泉控除(法84条・84条の2)>
事業主は、第1号厚生年金被保険者に通貨で報酬を支払う場合、被保険者が負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。
被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなった場合は、前月分及び当月分の標準報酬月額に係る保険料を控除することができる。
事業主は、被保険者に通貨で賞与を支払う場合、被保険者が負担すべき標準賞与額に係る保険料を、その賞与から控除することができる。
事業主は、保険料を控除したときは、控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。
第2号・第3号・第4号厚生年金被保険者に係る保険料の源泉控除等は、各共済法の定めるところによる。
<任意単独被保険者等の保険料納期限(法83条1項)>
任意単独被保険者及び高齢任意加入被保険者に係る毎月の保険料は、翌月末日までに納付しなければならない。
<過納保険料の充当(法83条2項・3項)>
厚生労働大臣は、納入の告知をした保険料額又は納付された保険料額が、納付義務者が納付すべき保険料額を超えていることを知ったときは、その超過額について、納入の告知又は納付の日の翌日から6か月以内の期日に納付されるべき保険料の納期を繰り上げて、納入の告知又は納付をしたものとみなすことができる。
厚生労働大臣は、この取扱いをしたときは、その旨を納付義務者に通知しなければならない。
【機構による滞納処分等】
<滞納処分等の実施(法100条の6第1項)>
日本年金機構が滞納処分等を行う場合は、あらかじめ厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
機構は、滞納処分等実施規程に従い、徴収職員に滞納処分等を行わせる。
機構は、滞納処分等を行ったときは、速やかにその結果を厚生労働大臣に報告しなければならない。
【財政調整】
<調整期間(法34条・令2条)>
政府は、必要な積立金を保有しながら、財政均衡期間にわたって財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合は、保険給付の額を調整する。
調整期間の開始年度は、平成17年度である。
財政の現況及び見通しにおいて調整の必要がなくなったと認められるときは、政令で調整期間の終了年度を定める。
政府は、調整期間中に財政の現況及び見通しを作成するときは、調整期間の終了年度の見通しも作成し、併せて公表しなければならない。
【積立金】
<積立金の種類(法79条の2)>
・特別会計積立金
→ 年金特別会計の厚生年金勘定の積立金
・実施機関積立金
→ 厚生労働大臣以外の実施機関の積立金のうち、基礎年金拠出金の納付を含む厚生年金保険事業に係る部分として政令で定める部分
<運用の目的(法79条の2)>
積立金は、被保険者から徴収された保険料の一部であり、将来の保険給付の貴重な財源である。
積立金の運用は、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から安全かつ効率的に行い、将来にわたる厚生年金保険事業の安定に資することを目的とする。
<特別会計積立金の運用(法79条の3第1項・第2項)>
厚生労働大臣が、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に特別会計積立金を寄託して運用する。
GPIFに寄託するまでの間は、財政融資資金に預託することができる。
<実施機関積立金の運用(法79条の3第3項)>
実施機関積立金は、原則として各実施機関が運用する。
ただし、その一部については、政令で定めるところにより、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法又は私立学校教職員共済法の目的に沿って運用することができる。
この記事では不服申立て・時効・罰則・財政・保険料・積立金についてご紹介しました。
次回に続きます!